平成12年度三八支部獣医師会への八戸市委託事業の概要
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事業名―学校飼育動物支援システム策定調査研究委託
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スケジュール―10月1日〜12月28日までの期間に実施
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委託料として7万円を支払うものとする.

(指導課)
 平成12年度に調査実施するために「学校飼育動物支援システム策定委託事業」に係る実態調査へのお願いを各校に要請しました.
 獣医師会では業務推進委員会を開催し,調査の内容と日程・調査員の依頼をしました.
 1回目の調査は,アンケートだけで各学校での動物飼育の実態および管理の状況等について調査をし,9月27日までに提出.43校分を指導課で集計して獣医師会と教育委員会とで結果の分析をし,それに基づいて2回目に実態調査を10月16日に獣医師2人と指導課の指導主事が1つのチームを編成して4チームで動物を飼育しており飼育舎のある36校の学校すべての実地調査をしました.
 この委託事業を受けて,10月末から12月にかけて三八支部獣医師会は業務推進委員会を開催し,システム骨子案の協議を重ねました.そして,八戸市に対して「学校飼育動物飼育施設の状況並びに管理状況の調査報告書」を提出し,問題点を明確にし,それに対する獣医師会が支援できるシステムの提案をしました.その支援システムの基本的な考え方は,相談体制および飼育指導体制の確立,教育委員会・校長会・連合PTA・獣医師会による協議会の設置,診療費の予算化であります.度々申し上げますが,このときの実際の経費は委託料で充足されるものではありませんでしたが,獣医師会の会員の協力も得られたこともあり,持ち出しをしております.お叱りを受けるかもしれないが,ここでも獣医師としての正当な報酬を得るということは重視せず,社会奉仕の一貫として会員の協力を得た.その点の不満は実績ができてから,それに基づいて交渉することの方がベターだと考えております.

 
平成12年10月20日
 「学校飼育動物の意義とゆとりある飼育を考える」と題して日本小動物獣医師会・学校飼育動物対策委員会副委員長の中川美穂子先生の講演会を開催し,多数の教職員・行政関係者の参加を得ることができました.
 平成12年12月の八戸市議会での私の一般質問が次の節目になるかと思います.

質 問
1.
学校飼育動物支援システム事業への基本的な考えと,三八支部獣医師会がまとめた報告書に対する対応について
教育長答弁(内容を要約したもの)

 本年度は,学校飼育動物について取り組みを行っている自治体の調査と,当市の学校飼育動物の管理実態調査を三八支部獣医師会の協力で実施しました.学校飼育動物支援システムの構築に向けて,これまでの「学校飼育動物研修講座」に加え,「学校飼育動物とのふれあい指導や飼育管理指導」の実現,ならびに獣医師に関する不慮の事故等への対応も含め,具体的に検討を進めているところであります.
 「学校飼育動物支援システム策定委託事業」に係る実態調査は支援システム作りを念頭においた行政(教育委員会)と獣医師会との連携においてできたものであって,実際に報告書ができたが,その報告書を受けて行政はどういうふうに取り組むのかという内容の質問になります.

 
(指導課)
 他の自治体ではほとんど市教委と獣医師会での委託事業という形態をとっているのですが,これは,お金は出すけれども後はすべてお願いしますということになります.教育はそれでいいのだろうか.八戸市教育委員会としては,あくまでも教育の一貫,八戸市の教育課題を解決していく一つの事業として捉える.獣医師には本業もあり,また小動物の専門の獣医師が各学区にいるとは限らない.これらを考慮し継続的なものにしていくために,獣医師の生活もあるので公務災害の補償という問題について議員から話があったのですが,どういう形で補償していけばいいのか前例がないのです.外部の方が授業の講師をするということはあるが,公務災害の補償を定めるということは獣医師の場合今立ち上がったばかりで,いわゆる学校医,歯科医師,薬剤師などのように根本的な法律がないので,そこのところで非常に苦労しました.その点を要綱の中で,非常勤職員という形で公務災害の補償ができるように配慮することができました.法制化されていないゆえの苦労でした.勉強するときの「教材」としての学校飼育動物観から,共に暮らし共に生きる同じかけがえのない命ある「仲間」としての学校飼育動物観への転換が大切です.そして,そこに獣医師に入ってもらえば,病気やけがの治療ということ以上に子供達の思いやりの気持ち・生命の大切さであるとか,そういう心を育てていく,ふれあい指導ができるのではないか.行政の思いと獣医師さんたちの協力して下さるという思いとでできてきたものである,と認識しております.委託をとる事業もあるかもしれないが,これからの八戸市教育委員会としては学校と獣医師との仲立ちをして学校の支援をしていくことが重要ではないかと結論を出し,さらに次の支援ネットワークを組むという事業を立ち上げました.

平成13年度
学校飼育動物ネットワーク支援事業について
(平成13年度新規事業として予算要求)
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事業の概要
 非常勤職員として委嘱した獣医師との連携で,年1回学校を訪問して,学校で飼育している小動物とのふれあい指導を通じ,幼児・児童に豊かな心を育む.教職員を対象に学校飼育動物の適切な飼育管理方法の指導と助言を行う.
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背 景
 新学習指導要領小学校生活科解説書に「学校と獣医師との連携が必要」と明記されており,平成12年度「学校飼育動物支援システム」調査を三八支部獣医師会に委託.
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期待できる効果(事業のねらい)
 獣医師によるふれあい指導は,幼児・児童が動物についての理解を深め,動物を愛護する態度を育成する.また,平成12年度実施の調査で明らかになった各学校の悩みの解消.衛生管理・死体の始末の問題,飼養管理方法・動物の病気やけがの問題,人獣共通感染症への不安などに対して獣医師による指導で,適正な飼育管理が可能となり,学校,保護者が安心してふれあい指導を推進できる.
  三八支部獣医師会は学校獣医師に関する規定(内規)を定め,学校獣医師の推薦,報酬,職務その他必要な事項を定めた.

(指導課)
平成13年度八戸市学校飼育動物ネットワーク支援事業の教育委員会のスケジュールとしては,
5月
「八戸市学校獣医師任用取扱要綱」を制定し,獣医師会会長へ「学校獣医師」推薦依頼.小学校教育研究会などへの事業についての説明と協力依頼.
6月
三八支部獣医師会会長から推薦を受け,「学校獣医師」に委嘱状交付式
 小学校43校に対する「八戸市学校飼育動物ネットワーク事業」についての説明会,獣医師会代表の挨拶と担当獣医師の出席が依頼されている.
7月
「ふれあい指導」の期日について,獣医師・学校間の連絡調整をし,訪問の計画を決定する.
8月下旬〜
10月 
「ふれあい指導」の実施
11月5日
動物飼育研修講座;実践報告と協議,獣医師からの指導助言
1月下旬
学校飼育動物ネットワーク協議会;獣医師会・行政・連合PTA
 現在の教育委員会の立場は学校に対してこれをやりなさいといえば済むものではなく,学校と教育委員会は対等の立場であり,学校が学校運営するためのお手伝いする機関であるという基本的な考え方から,市内の43校という規模が足並みを揃えるということは非常に難しく,支援システムをネットワークにしているところもないので,立ち上げるのにはかなりの苦労があった,と聞きました.(図参照)

<学校飼育動物支援ネットワーク構想図>

3.今後の課題
 行政と獣医師あるいは獣医師会とのかかわりは,狂犬病予防注射や飼い主指導を通じて以前からありました.(この場合,環境衛生の分野であり,教育委員会とは担当部署が異なります.)獣医師で市や県の議員の方もおられます.そして,特に昨年から地方分権一括法成立により,所管が県から各市町村に移行し,行政における獣医師にかかわりのある分野が所管の移行で身近になりました.そこで,この機会に学校獣医師としてはもちろんですが,青少年問題や環境問題などに対しても,獣医師の専門知識が政策や行政に活用されるよう努力が必要であると思います.具体的には,行政にある各種審議会に獣医師が積極的に参画していくことが重要な課題であると考えます.

4.総     論
 文部科学省が示した新学習指導要領によりますと来年4月からの実施に向けて,学校獣医師制度を全国で取り組まなければならない必要性があると思います.行政においても獣医師会との連携をどのような形で持てばよいか,という問題が発生してきます.日本獣医師会雑誌の5月号で東京都獣医師会の町田先生が投稿しておられますので,一部省略して引用させていただきます.「議会議員と獣医師会とのつながりが特に重要になってきた.練馬支部では支援している区議会議員に区議会での代表質問を依頼して,行政の解答を引き出すのが最善とということに基づいて,動物行政について動物行政研究会を発足させた.そして都議会議員,衆議院議員に顧問をお願いしている.」とお書きになっております.それぞれの獣医師会に獣医師で議員がいれば積極的に行政に働きかけることができると思いますが,一般的に行政というのは新規の事業を実施する時にとても慎重になる傾向があります.せっかく日本獣医師会に議員政治連盟があり,選挙の時に推薦や応援をしているのですから国や都道府県などの地方自治体にそういう方々を通して,学校獣医師の必要性をご理解いただき,行政などに要請していくべきだと考えます.政治連盟の活動の中身については,私も推薦していただくだけでよくわかりません.そこで日本獣医師会として政治連盟の方々に要請していき,また,各獣医師会にもそのように勧めるようにしていくことが肝要だと考えます.
 また,最近世界的社会奉仕団体である,ライオンズクラブ国際協会では,深刻な様相を見せている青少年問題に対して,学校教育を通じて支援していくライオンズクエスト委員会を設置し,取り組み始めました.青森県においても7月22日のキャビネット会議において物心両面において学校飼育動物支援システム事業に協力することが決定されました.
 このように学校獣医師制度を取り巻く環境が広がりつつあるなか,国の行政改革による社団法人などの見直しが行われている今,社会への貢献が求められており,その役目を私達が果たしていくことが必要であると思います.また,スタートしたばかりの学校獣医師制度でありますが,獣医師会会員の協力と理解のもとに継続し,効果をあげ,実績を残すことが求められていると思います.