(4) お わ り に

  筆者が昭和55年,当時自分の子供が通っている学校などで初めて学校での飼育を知り,自分たちが息子たちに教えてきた動物の見方とはまったく異なる現状を,なんとか改善したいと近隣の獣医師と一緒に学校にかかわり始めてもう20年になる.その後,経緯があり平成3年に筆者の住む旧保谷市教育委員会が地元の獣医師を飼育指導のために市立小学校に派遣したのが,最初の「飼育指導を伴う教育委員会と地区獣医師会との飼育支援事業」であった.その後同じ獣医師会管内の小平市など近隣の市に広がり始めたのである.
  それから10年経過した現在,各地でこの連携は広がりをみせ,今,「学校獣医師」との言葉が耳に馴染みつつある.
  今回,この調査に関わらせていただき実際に連携している地域の教師の感想をいただいたのは幸いであった.連携群として,教育委員会と獣医師会が連携事業を始めて3年以上が経過し,しかも獣医師が学校を訪問して現場と交流している地区の対象校を抽出させていただいたが,これらの地域の学校は83%の学校が獣医師会と教育委員会との飼育に関する連携事業を評価しているのを知って,安堵しているしだいである.また,「動物が好き」だから飼育を担当してもよいと答えた担当教師が明らかに連携地区に多かったことは,獣医師の支援の効果 と捉えられ,嬉しいことである.一方,獣医師との連携について認識していない学校の例や,獣医師側の問題に対する課題もいただいた.今,全国で広がりつつあるこの連携事業が方向を間違わないように,また獣医師の対応法などを整備するときであると考え,獣医師側もこの資料を活用していただきたい.
  現在各地でこの問題に懸命に関わっている獣医師は,児童と動物がよい関係をむすべるように手伝いたいと努力しており,そのために教師,学校を支援したいと考えている.この学校獣医師制度は子を持つ獣医師の気持ちから自然発生的に生じてきた活動であり,最近急に行われてきている保健所や家畜衛生保健所の衛生調査とは目的を異にしている.衛生調査に携わる方々も,法律に従いながらも児童の心を第一に考え,ともに協力しあいたい.児童が名前をつけて可愛がっている動物を,役所は淘汰といいながらも大事に扱ってもらいたいと思う.
  忘れてはならないのは,学校担当獣医師は学校に飼育法を監視に行くのではなく,飼育に関わる学校の苦労を減じ,児童の健全育成に役立つような飼育の実現を支援に行くということである.「飼育に関わる教師の気持ちの調査」の回答に,「学校での飼育環境が悪く,辛い気持ちになることが多い.」と書いた教師があった.他にも多くの現場の教師,校長先生方から,「飼育舎を覗くと,動物の状態に胸が痛くなるけど,仕方がない」との声を聞く.獣医師も同じ思いである.また,児童に同じ思いをさせたくないと思う.これが,全国のほとんどの獣医師が,今も昔も,学校飼育動物の診療費を無料または非常に廉価にしか請求しなかった理由であろう.
  非連携地域,また新しく連携を始める地域などでは,すぐには獣医師と教師の信頼関係が築けないかもしれないが,小さな違和感を何とか解決し,大きな「子どものために」という目標だけを考えてこの制度を広げて欲しいと念願している.


 なお,教育委員会との連携活動のガイドラインとマニュアル本を示すので, ご参考になれば幸いである.