〔厚生省生活衛生局 西本 至局長〕
  ただいまご紹介いただきました西本でございます.一言ご祝辞を申し上げます.
本日ここに,第57回社団法人日本獣医師会通常総会が盛大に開催されますことを心よりお慶び申し上げます.皆様方におかれましては,常日頃から私ども公衆衛生行政の推進にさまざまな立場から多大なるご協力を賜りまして,この席をお借りして厚く御礼を申し上げる次第です.また,ただいまお話がありましたように,先般 約92年ぶりに,宮崎県と北海道におきまして口蹄疫が発生いたしました.これに際しまして,食肉や牛乳に関する風評被害の防止,感染食肉の流通 を防ぐための防疫対策およびと畜検査の徹底等々,皆様方の多大なるご努力に対しまして改めて敬意を表する次第です.
  この事例で見ますように,近年,動物由来感染症の分野におきまして腸管出血性大腸炎,いわゆるOh157,あるいはウイルス性出血熱などのいわゆる新興再興感染症というものが注目を浴びております.人の感染予防のための動物対策ということに果 たす獣医師の役割は,今後ますます重要になってくるものと思われるわけです.私ども厚生省といたしましては,動物由来感染症に関する知識および予防策の普及のためのパンフレット,あるいはポスターの作成,それから本年1月からはウイルス性出血熱につきましてはサル,狂犬病につきましてはネコ,キツネ,アライグマなどについて輸入検疫制度をスタートさせたところです.
  さらに,動物由来感染症に関する情報収集の一つの手立てとして,情報分析体制整備事業というものを昨年度から開始しておりまして,すでに3自治体で実施しております.今年度は現在までのところ11の自治体から実施の要望をいただいているところです.また狂犬病につきましては,飼育犬の登録,あるいは予防接種の実施などにつきまして長年にわたってご協力をいただいた結果 ,40年以上も発生防止が図られております.本年で法施行50周年を迎えることができました.これもひとえに皆様方のご努力の賜物であります.あわせて御礼を申し上げますとともに,今後の一層のご協力をお願い申し上げる次第です.
  一方,食品衛生の分野におきましても,食中毒の防止のために各と畜場および食肉処理場におきまして,自治体の検査員や食鳥検査員の方々等による指導のもとで,食肉あるいは食鳥肉の衛生向上に取り組むとともに,鶏卵,水産食品等の衛生対策も進めているところでございます.また,本年2月の食品衛生調査会中毒部会におきまして,カンピロバクター食中毒のうちで,食肉および食鳥肉に起因する事例が判明したということもございまして,食鳥肉の総合的な衛生対策の構築および改正と畜場法政省令の施行の徹底というところが提言されたところです.
  以上,いろいろと述べさせていただきましたが,これら諸施策の今後の推進に当たりましては,日本獣医師会のご理解とご協力が不可欠でございます.今後とも何分よろしくお願い申し上げる次第です.最後になりましたが,今後の日本獣医師会のますますのご発展と,本日お集まりの皆様方のご健勝を祈念申し上げまして,誠に簡単でございますが私のご挨拶にさせていただきます.どうもありがとうございます.

〔社団法人中央畜産会 中瀬信三副会長〕
 私はただいまご紹介にあずかりました中央畜産会副会長の中瀬でございます.本日ここに,第57回の日本獣医師会総会が開会されるにあたりまして,中央畜産団体を代表いたしまして一言ご挨拶を申し上げます.
  まず一言,御礼とお祝いを申し上げたいと思います.御礼と申しますのは,日本獣医師会とわれわれ中央畜産会の関係についてでございます.ご案内のように,私ども中央畜産会の山中貞則会長は貴会の顧問に任ぜられております.山中会長は,「獣医師でない自分が日本獣医師会の顧問に任ぜられていることはまことに名誉なことである」と大変喜ばれておりまして,自分は畜産会と獣医師会の懸け橋であると常々申しておられます. また,日本獣医師会の歴代会長は,中央畜産会に獣医師会を代表いたしまして理事としてお入りいただき,ご指導いただいているわけです.さる6月19日に行われました中央畜産会の総会における役員改選に際しまして,ここにおられます五十嵐会長に重ねて常務理事にご就任いただくようお願いを申し上げたところでございます.私はこのように,われわれ両団体のトップが固い絆で結ばれていることを,大変うれしく心強く存じておりまして,貴会の絶えざるご好意を感謝している次第です.今後とも何卒よろしくお願いを申し上げる次第です.
  第2は口蹄疫問題でございます.この3月以来の口蹄疫の突発に伴います騒動が無事に終息したことにつきまして,心よりお喜びを申し上げますとともに,国,都道府県,市町村の各行政機関,団体および一般 の関係各位の一致したご努力,なかんずく各機関,各持ち場にありまして専心事態の対応と処理に当たられました獣医師各位 のご努力に心からの敬意とねぎらいの意を表したいと存じます.
  私はたまたま昨日,この明治記念館で行われました英国の世界口蹄疫リファレンス研究所のキッチン博士の講演と,そのあとの質疑応答を聞かせていただく機会を得ましたが,この問題につきましては,まだ伝染経路は同定できないながらも,今回の突発事故に対応しての日本の政府ならびに獣医陣の技術水準は高く,対応は適切であったということを知らされまして,大変頼もしく思った次第です.畜産における,時に家畜衛生における危機管理の重要性に思いをいたされまして,貴会がさらなる指導性を発揮されるようご期待申し上げる次第です.
  さて,わが国の畜産と農業についてでございますが,今われわれは大きな時代の転換点にあることはご高承のとおりでございます.もう再々にわたってお聞き及びのことではございましょうが,昨年7月に食料・農業・農村基本法が制定され,また最近はそれに基づく基本計画も制定されまして,21世紀に向けてのわが国の農業,農村のあるべき基本方向が示されました.
  畜産分野におきましてもいろいろなことが起こっております.わが国酪農の発展の基幹でありました加工原料乳の不足払い制度が30数年ぶりに改正されました.また,土地利用型大家畜のあるべき姿を描きました酪農肉用牛近代化を図るための基本方針あるいはその基本計画,あるいは家畜改良増殖法等々も新しく改正されました.さらに,畜産環境問題の適切な対応の指針として,いわゆる家畜排泄物法といわれます家畜排泄物の管理の適正化と利用の促進に関する法律も制定されるなど,新しい制度や施策が次々に打ち出されております.まさに仏作って魂を入れる.今年はその第1年度にあたる年であろうということで,私ども大いに心をひき締めて今後対処したいと存じております.
  このような農政と畜産政策の流れの根底にあるものは,国民のニーズに即した農業生産をいかに図っていくか.そして農業の中には競争原理をいかに持ち込み,国民の納得のいく形で生産を続けていくかが問われていると思うのでございます.農林水産省におかれましては,この先に述べました基本法に基づきまして,食糧の自給率を45%と定めました.これは実際の農業生産の趨勢から見ますとかなり思い切った数値でございまして,相当な努力をしないと実現がなかなか難しいのではないかと思う次第です.
  これを畜産の分野から見ますと,まず飼料の自給率の向上がこの目的達成のための喫緊の課題であるというふうに存じます.国におきましては飼料増産のための戦略会議を設置されまして,都道府県,市町村を通 じたキャンペーンを開始いたしまして,一大運動として盛り上げていこうということになっております.国民に対して安定的に安全な畜産食料を供給するという面 からも,関係者が一致して飼料の国内生産について思いをいたす必要がある,またその時にきていると存じます.