【資 料】
わが国の獣医学教育の抜本的改革に関する提言(I)平成12年3月27日日本学術会議 獣医学研究連絡委員会
提 言 要 旨(1)新制大学における獣医学教育わが国の獣医学修業年限は,第2次大戦後の抜本的学制改革の際に,GHQから医学・歯学と同様に6年教育を勧告されたが,当時の獣医界では諸般の事情から,4年制の新制大学にとどまらざるを得なかった.また,修業年限4年制大学の獣医学科における教育では,専門教育が2年であり,改革前における高等専門学校の専門教育3年よりも少なくなった.したがって,戦後の混乱期における獣医学教育内容はきわめて貧弱なものとなった. その後わが国の経済復興に伴って,産業動物,小動物あるいは獣医公衆衛生等の各分野で,動物医学としての個体診療あるいは衛生管理の充実が強く求めらるようになり,4年制の獣医学修業年限では,社会の要請に対応し得ない状況に立ち至った. (2)獣医学修業年限の延長 わが国の獣医界は,戦後一貫して獣医学修業年限を延長し,社会的な要請ならびに国際的レベルに対応できる獣医学教育の向上を主張し,永年にわたって請願運動を続けてきた.その結果,1971年(昭和46年)に日本学術会議から「獣医学修業年限延長について」の勧告が出された.この勧告にもとづいて国立大学は再編整備を行い,特に臨床・応用獣医学等の実務教育を充実することを目的として修業年限を延長することとなった.しかし,獣医学の修業年限を一挙に6年制とすることは諸般の事情で困難であったことから,獣医師法の一部改正によって大学院修士課程を利用し,積み上げ方式によって暫定的に修業年限を6年とし,獣医学の6年教育がスタートした.ついで,1983年に学校教育法が一部改正され,獣医学修業年限が6年一貫教育となり,大学院修士課程が廃止され標準修業年限4年制の博士課程が設置された. このように形式的には獣医学修業年限が6年に延長されたが,実務教育の裏付けとなる教員数ならびに講座数の増設はきわめて不十分であった.これに対応するために各国立大学は相互に獣医学科の統合再編整備を行い,スケールメリットを図って獣医学部を設置するための検討が行われたが,ただちには実現せず,修業年限6年制の実施には間に合わなかった.そのため所期の目的であった臨床・応用獣医学等の実務教育を充実するための施設・設備ならびに教員等の充足は実現しなかった.その結果,教育時間数が延長されて基礎獣医学は教育・研究ともにある程度は充実したが,実務教育はほとんど変わらず,特に多くの国立大学においては,獣医師国家試験出題科目の17科目に対応できない体制で教育が行われてきた.そのため実務教育教員の負担増が大きく学生の教育に大きな支障をきたしているのが実状である.1983年学校教育法を一部改正し獣医学修業年限を6年に延長した際に,文部省は,国立大学獣医学科の統合再編整備については,一時中断するとしても機会があれば再開して獣医学部を設置するものとし,現在においてもその方針は変更されていない. |