紹     介

木版 日野友松軒著『牛療治調法記』(1756)について

大眉 博  長尾壮七  五十嵐幸男

 このたび香川県獣医師会会員原田 暹氏から「牛療治調法記」と題する古文書の鑑定を依頼された.  わが国の古い獣医学の書物はすべて中国の原典によるものであるが,この「牛療治調法記」(図1:以下本書と記す)も湖東日野友松軒著とはなってはいるものの,調査を進めてみて,やはりその元が中国の『牛経』にあることが判明した,以下に標題についての調査・考察を報告する.

 

 本書の構造概要
 本書は香川県中西 碩(みつる)氏の所蔵する縦104mm,横150mmの右開き袋綴じ本で,各ページは137mm×85mmの枠内に印刻,中折り両側計7mm部分に「牛科重宝(まま)記」(図2)とあり,その下に丁数が刻まれている.なお,丁数は内表紙ゼロ丁(図1右)から百一三終となって白紙が一丁ついている.しかし,実際は五十〜五十九がなく,六十から通 し番号となり,同じく八十〜八十九欠,百〜百九欠と計30丁欠,逆に百十一,百十六が重複し,百十七の次が誤刻削除で百十■(ママ)となって(図2),次に百十八がある.計三丁の重複があリ,記載丁数より合計27丁減の98丁で構成されている.出版は寳暦六年丙子七月吉日(1756),著者日野友松,版元は京 油小路四條上ル町 銭屋三郎兵衛である.題簽はない.


図1

 
図2