行政・獣医事

厚生省における狂犬病等動物由来感染症対策の実施状況

 このたび,厚生省から狂犬病等動物由来感染症対策に関する資料を入手し,その実施状況をとりまとめたので紹介する.

 1.狂犬病予防対策について
 平成10年10月2日付け狂犬病予防法等の一部を改正する法律により狂犬病発生時の措置及び輸出入検疫の対象動物として犬に加えて猫,アライグマ,スカンク,きつねが追加され,昨年4月1日から国内発生時の届出等,本年1月1日から輸出入検疫制度が施行されたことにより,さらなる狂犬病予防対策の徹底が図られているところである.
 また,「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号)の施行に伴い,平成12年度から犬の登録等の事務が都道府県から市町村へ委譲される.狂犬病予防注射の実施,注射済票の保管及び交付については,都道府県等が地方獣医師会の協力を得て実施するよう従来から自治体あて依頼されているが,狂犬病予防接種等の対策が円滑に図られるためには,市町村及び地方獣医師会・開業獣医師との連携が不可欠であることから,さらなる関係機関との密接な連携を図ることとされている.
 なお,自治体における狂犬病予防対策を円滑に行うために,平成7年度から狂犬病予防対策事業費が地方交付税化されたところであり,平成12年度も,都道府県については,捕獲・抑留業務にかかる経費及び市町村については権限委譲による登録原簿等の管理にかかる電子化の設備経費が要求されているところである.
 2.動物由来感染症対策について
 平成10年10月2日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が公布され,平成11年4月1日から施行されたが,この中で動物から人に感染する動物由来感染症対策として,重篤なエボラ出血熱,マールブルグ病を媒介するサルについては,平成11年4月1日から国内で発生した場合における発生時の届出が,また本年1月1日から輸入禁止地域の制定及び輸入検疫制度が施行されたところであるが,本件については,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第54条第1号の輸入禁止区域を定める省令(平成11年12月1日厚生省農林水産省令第2号:別 記1)に基づき対応することとされている.
 一方,農林水産省あて,輸入検疫に係る検査においてサルが赤痢又は結核等の動物由来感染症にかかっている等を確認した際は,その旨を検疫施設の所在地を所轄する保健所に連絡するよう協力依頼するとともに,輸入業者等に対しても「輸入動物特にサルによる人の健康の被害の防止について」(昭和49年衛情第10号厚生省公衆衛生局保健情報課長通 知:別記2)の周知等について協力方依頼されている.
 なお,昨年8月青森県において,本州で初めてエキノコッカス症の動物(豚)がと畜検査において発見されたことから,厚生科学研究事業において青森県,岩手県及び秋田県の3県における環境指標としての豚に対すると畜検査時の診断体制の確保等サーベイランス体制の整備が図られている.
 3.動物由来感染症情報分析体制整備事業について
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で規定されている1類感染症から4類感染症の多くは動物由来感染症であり,感染症に関する情報の収集と国民への還元,調査研究・診断体制の整備等については国又は自治体の責務とされていることから,国内対策の一環として,動物由来感染症情報収集分析体制整備事業(疾病予防等対策費補助金)を本年度から実施されており,本年度は東京都,千葉県及び富山県において実施されているが,次年度以降,その他の自治体においても本事業の積極的な活用を推進し,動物由来感染症の予防対策に努めることとされている.