鶏ポックスウイルスベクターワクチン
ポックスウイルスベクターは一過性に増殖し短期間に強い免疫を誘導した後は,体内に残留せず消失するために安全である.このベクターは皮膚で増殖して細胞性,液性の免疫を誘導し,移行抗体の影響を比較的受けにくい(表2).
また,組み換えウイルスの研究は組み換え体の作出が容易なポックスウイルスベクターで始まった.そのため鶏でもポックスウイルスベクターの報告が多く,重要な基礎データはこの実験系で得られている.今までの研究でポックスウイルスの合成プロモーターを使ったものが最も強い免疫を誘導できることがわかっており,またこのベクターには外来遺伝子挿入部位
がたくさんある.鶏ポックスウイルスでは総説[1]に紹介されたものを含め,すでに多くの感染症で試みられているが(表3),このベクターによる免疫の強さは生ワクチンが誘導する免疫には及ばない場合が多い.また,ポックスウイルスは外来抗原を発現させると移行抗体の影響を受けやすくなる点も問題である.
鶏アデノウイルスベクターワクチン
アデノウイルスベクターは病原体の侵入門戸である腸管局所での免疫誘導に適したウイルスベクターとして,また腸管粘膜における免疫機構の研究用ベクターとして期待されている.このベクターはポックスウイルスベクター同様,短期間に細胞性,液性の強い免疫を誘導した後に体内から消失するため安全である.しかし,アデノウイルス感染症を予防する生ワクチンは開発されておらずワクチン候補株がないこと,また移行抗体の影響を受けやすいことが問題である(表2).
組み換えトリアデノウイルスの報告は現在までのところ,IBDVのVP2を挿入したものに限られる[8].この系では,接種ウイルス量 が多ければ現行IBDV生ワクチンに匹敵する高い免疫が誘導された.
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