3)科学的根拠に基づく衛生管理
  衛生管理は経験と勘でなく,科学的かつ疫学的データに基づいて行われる.したがって,HACCPプランの作成に当たっては,微生物検査結果を含む科学的根拠に基づいたかなり広範囲かつ精度の高いデータの収集と専門的知識を必要とする.
  4)原材料の生産から最終消費までの一連の工程を管理
  従来の食品の衛生管理や監視が最終製品の監視とランダム検査に重点をおいていたのに対して,原材料の生産から最終消費までの一連の工程がすべて管理の対象になり,最終製品を検査する必要性はほとんどない.
  5)特定の工程で集中的に管理
  HACCPシステムは病原菌がすでに存在していると仮定して,その危害を特定の工程(CCP)で集中的かつ計画的に頻繁にモニタリングして,増殖防止さらには排除することが基本である.そのため,リアルタイムで結果を把握することが必要なため,結果を得るまでに長時間を要する従来の培養法による微生物検査は適さないとされている.しかし家畜の生産現場では,時間的に余裕があるので日常的な微生物検査の採用も可能である.
  6)自主衛生管理システム
  食品生産者自身がHACCPプランを作成し,自ら衛生管理の適切性を定期的に検証して,プランの見直しを繰り返すことにより食品の安全性に対する保証を一層向上させる.
  7)衛生管理手順のマニュアル化
  HACCPプランは誰でも理解できるようにマニュアルとして作成し,日常の衛生管理はこのマニュアルに沿って機械的に実施する.衛生管理で行うモニタリングは,誰にでも容易に実施でき,特別な技術および特殊な装置や設備を必要としない.
  8)衛生管理にかかわる情報および衛生管理結果の記録化(文書化)
  HACCPプランの作成および衛生管理の際に得られた情報やデータは,すべてあらかじめ決められた文書作成要領に従って記録し保存される.したがって,これらの記録を調べれば過去の時点にさかのぼって衛生管理状態の適否の判断が容易にでき,行政側にとっても監視や指導が効果的に行うことができるとともに公平な判断が可能になる.また,これらの記録文書はPL(製造物責任)法の対抗手段として,自社製品が安全なものであるということを証明する重要な証拠にもなる.