【紹  介】

世界獣医寄生虫学会の学術貢献と横浜大会の意義

早崎峯夫(東京農工大学農学部獣医学科家畜内科学教室)

 今年の8月に第17回世界獣医寄生虫学会(World Association for Advancement of Veterinary Parasitology, WAAVP)がデンマークの首都コペンハーゲンで開催された.表1に示したように,この世界獣医寄生虫学会は1963年に設立されて以来,2年に1回世界各地で開催されてきた長い歴史をもち,かつ活発に活動している学会の一つであるが,本学会の学術貢献はかならずしも広く知られてはいないようなので,4年前の横浜大会の思い出も交えて,特に最近の活動ぶりを中心に紹介する.

盛会な大会

 過去3回の発表演題数は,1993年のケンブリッジ大会では約300題,1995年の横浜大会では約170題,1997年のサンシティー(南ア)大会では約330題であった.横浜大会の出席者の少なかったことは,研究者数の多いヨーロッパ,アフリカ,南北アメリカからみて日本はやはり遠隔地でありかつ物価も高いこともあって参加者が少なかったことは致し方ないとしても,最近の大会は平均してほぼ300題以上という盛会な学会となっている.参加者数も毎回500人以上を数える大規模な大会となるので,それだけに大会開催地委員会は円滑な学会発表の運営だけでなく,2年に1度の再会を楽しみにしている会員のためにも,印象深い開会式や閉会式,学会企画ツアー,などの企画も欠かせない.
  国際学会は,参加者数が100人以下の時じっくりと科学的議論に時間を費やせて真に科学討論の場が作れる“いい学会”になる反面,参加費やスポンサーからの寄付など必要な金額が集まらず開催側は資金繰りに苦慮する.一方,200人から300人前後の規模の学会は,開催資金も一応余裕をもって集めることができ,満足の行く科学討論の場が作れるとともに多少なりとも国際学会らしい華やかな開会式や参加者親睦半日ツアーなどを企画することができる.しかし,400〜500人以上ともなると,学会開催にかかわる事務量が格段に増えることになり,しかも開会式や閉会式は十分に華やかに行うことが要求され,どうしても“お祭り集会”に近くなってしまうものである.
  この点,本学会は,比較的大規模にもかかわらず,朝9時から夕5時まで実効ある学術討論がまじめに戦わされる学会で,アットホームな雰囲気の大会作りに成功している学会の一つといってよいであろう.ちなみに,一般会員の年会費はわずか10ドルであり,したがって,役員の役員会や大会への出席費用も一部はいわゆる役員個人の負担に依っている.このような手弁当による役員の地道な運営実績が,一般会員を始め多数の賛助会員(製薬企業など)の支持を強く得ている理由であろう.