<<特集:読者参加企画−私もひとこと>>

「小動物診療に対するマスコミ報道」「学校飼育動物と獣医師とのかかわり」
「獣医師の生涯教育」

 本誌では,平成11年1月号から,読者の皆様に誌面づくりに参加していただき,より身近な雑誌として感じていただけるよう,「私もひとこと」のコーナーを新設することといたしました.
  本企画は,テーマをより個別のものとし,さらに,1カ月ごとにテーマを変えるのではなく,半年間程度同じテーマのご意見を募り(平成10年11月号709頁参照),誌上で会員の皆様に意見交換,意見のキャッチボールをしていただけるよう配慮いたしました.本号より標記テーマについてのご意見を紹介いたします.

 「かくして学問の自由は崩壊する」を読んで

岡部一見(三重県獣医師会)
  わが国が先の大戦に敗れ54回目の終戦記念日を迎えようとしているこの時期に,52巻7号に掲載された本稿を読んで,些かならず困惑しているのは私だけではないと思う.
  公益法人,学術団体である日本獣医師会の会誌に「治安維持法」とか「戦地に赴く一兵卒」等の表現はあまりにも不釣り合いではなかろうか.戦後生まれで,戦後の教育を受けた私のような人間には到底理解できないし,本稿にある美濃部達吉博士の「天皇機関説」が,今日発表されたのであれば,決して処罰されることはない訳であり,その善し悪しは別として,現在のわが国は誠に自由な国である.
  しかし,その自由も権利も憲法第12条が示すように,無制限に認められている訳ではなく,その乱用は認められないし,「公共の福祉」ということが前提であることはいうまでもない.
  われわれ獣医師に与えられた「処方権」「裁量権」もまた,「公共の福祉」という枠を逸脱することは許されないし,その乱用は反社会的といわれても仕方がないのではなかろうか.
  今般日本小動物獣医師会から刊行された薬用量マニュアル第2版の中に「適用外使用に当たっての基本事項」が示されているが,その内容は「公共の福祉」ということを全面に出したもので高く評価されて然る可きだと思う.適用外使用は,適用薬がないということが絶対条件であり,いわば止むに止まれず行われる行為である.
  では,水ぐすりは如何なるものか.
  私が開業している三重県においては,数年前まで開業獣医師の半数以上が,この水ぐすり愛好家であった.飼育者はわれわれの診療施設に「フィラリアの予防薬を下さい.」といって来院してくる.そこで,必要な検査を行った上で「フィラリア症予防薬」を処方することは獣医師として当然のことである.
  産業動物用イベルメクチン(アイボメック)は,「フィラリア症予防薬」ではないということは歴然たる事実である.「フィラリア症予防薬」を求める飼育者に対し,「フィラリア症予防薬」ではない薬を「フィラリア症予防薬」であると偽って処方する行為は,法律とか権利以前の問題ではなかろうか.
  さらに酷いのは,アイボメックを粉に染み込ませた物を飼育者から薬品名を聞かれ,「ミルベマイシン」と答えたり,水ぐすりを「錠剤では飲み難ので砕いて液体に溶いた.」と答えた獣医師が存在した事実は如何ともしがたい. 狂犬病集合予防注射の会場に通知はがきを持って,犬を連れてくれば,「狂犬病予防注射をして下さい.」といわなくても,そのために来たことは暗黙の了解であろうが,その犬に豚コレラの予防注射を接種するのと同次元であると批判されても仕方がないであろうし,マスコミ,いや,社会から批判されて当然であると判断する.