農場から食卓までの食品の安全性と国際基準

岡 本 嘉 六

鹿児島大学農学部(〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-24)

Global Standards for Food Safety from Farm to Table

Karoku OKAMOTO

Faculty of Agriculture, Kagoshima University, 1-21-24 Kohrimoto, Kagoshima 890-0065, Japan

日獣会誌 52 485〜492(1999)

は じ め に

「狂牛病」,「O157」,「サルモネラ」,「ダイオキシン」など,食品の安全性への不安に起因する社会的パニックが繰り返され,その根底には不安が増幅されていく社会システムの欠陥がある.地域共同体内の物流が主要部分を占めていた時代には,生産状況が消費者にもみえており,危険性の予測が可能であった.高度経済成長時代を経る中で食糧の自給率が次第に低下し,1993年のウルグアイラウンド締結以降は農畜水産物についても自由貿易が基本となり,食卓に上る多くの製品が輸入物で占められる時代になった.もはや多くの人々にとって直接体験することはできない状況にあり,「安全性保証システム」がそれを代行せざるを得ない時代になっている.しかしながら,食品衛生法に基づく行政や食品衛生協会による衛生確保の努力は大であるものの,パニックが繰り返されることは,「安全性保証システム」として国民の全幅の信頼を得ていないことを示しているのではなかろうか?


図1 食品の品質と安全性