6.ま  と  め

 いずれにしても,「獣医師」という呼称,概念が長年にわたり社会に定着していることから,この問題は,獣医師会,獣医学系大学等獣医界における問題にとどまらず,獣医師以外の畜産関係者,公衆衛生関係者等多方面に大きな反響をもたらすであろう重大問題と考えられるので,十分に関係者の意見を徴し,慎重に検討したうえで結論を出す必要があろう.

【参  考】

「獣医師」および「動物医師」という呼称の比較

「獣医師」という呼称について 「動物医師」という呼称について
1.「獣(けもの,けだもの)」という言葉のイメージは,一般的によくない.
2.「獣」という字は,獣医師等関係者を除き,一般の者が使用する頻度がきわめて低く,字として馴染みがない(「獣」という字を書けない者がよくみられる).
3.「獣」という言葉の一般的な解釈からすれば,鳥類を含まない哺乳類の動物を意味するので,今後,獣医師の診療対象動物が拡大している中で,将来的なことも考慮すると適切ではないと考えられる.
4.明治以降長年にわたって使用し,定着している呼称であり,その概念も確立しており,この名称が不都合であるとする特段の理由はない.
1.「動物」という言葉は,「獣」という言葉に比べてイメージがよい.
2.「動物」という字は使用頻度が高く,一般の者にも馴染みがある言葉である.
3.21世紀の獣医業を展望した場合,「獣医師」という呼称よりも「動物医師」の方がその言葉の一般的な意味からしてもひろがりが感じられてよい.
4.社会に定着し,概念として確立している「獣医師」という呼称を「動物医師」に改称することにより,各方面に大きな反響をもたらす可能性があるが,一方で一時的な混乱はあっても,慣れの問題であるとする考え方もある.
注:以上の資料は,平成3年10月における獣医師法改正の検討の際,日本獣医師会が作成し,農林水産省に提出した資料である.