社団法人日本獣医師会創立50周年記念式典 続き
《日本獣医師会会長挨拶》
【日本獣医師会 杉山文男会長】
社団法人日本獣医師会創立50周年記念式典を挙行するに当たり,主催者として一言ご挨拶を申し上げます.
日本獣医師会は,第2次世界大戦後間もない昭和23年11月9日,社団法人として設立されましたが,現在では,53の社団法人である地方獣医師会を会員とし,約2万7千人の構成獣医師を擁する全国団体として成長し,本年で満50年を迎えることができました.
そして本日,ご来賓をはじめ,多数の関係者のご出席を得て,かくも盛大に記念式典を開催する運びとなりましたことは,私どもの大きな慶びとするところであり,また,これまでご指導,ご支援を賜ってまいりました関係各位に対しまして,この機会に改めて深甚なる謝意を表する次第であります.
この50年の間,わが国は,本会の設立当時においては誰しもが予想だにしなかったほどに発展を遂げ,社会もさまざまな面で著しく変化するとともに,私ども獣医界を取り巻く環境も大きく様変わりいたしました.まことに隔世の感を深くするものであります.
日本獣医師会のこれまでの50年にわたる歴史の積み重ねの中で,近年における特筆すべき事項をいくつかあげますと,まず第一に,わが国の獣医学教育制度の改革をあげなければなりません.
昭和46年に日本学術会議が,内閣総理大臣に対して,獣医学教育の修学年限を4年から6年に延長するよう勧告したこと,また日本獣医師会が,従前から文部省等にその実現を強く要望してきたことを受け,過渡的な措置として,昭和53年4月の入学生から修士課程2年積み上げによる6年制教育に改められました.
次いで,昭和58年の第98回通常国会において,獣医学教育年限を学部6年制とする学校教育法の一部改正案が原案どおり全会一致で可決され,翌年4月の入学生から6年一貫教育が行われるようになったものであります.
この獣医学教育改革の背景には,獣医師の業務が,日本獣医師会設立当時においては,家畜防疫業務,産業動物診療業務中心であったものが,その後の社会の進展等に伴って,公衆衛生関係業務や小動物診療業務の比重が次第に高まるとともに,獣医師の職域もバイオメディカル分野へ拡大する等,多様化する社会のニ−ズに獣医業が十分に応えていくことが求められるようになったことがありました.
このような背景に関連して,獣医師にとっての基本法である獣医師法についてもその見直しを求める気運が高まり,関係国会議員の方々のご理解とご支援,ならびに農林水産省当局のご尽力の結果,平成4年5月に獣医師法の一部改正及び獣医療法の制定が行われたところであり,このことを第二の特筆事項としてあげることができましょう.
これは,獣医師法制定以来実に43年ぶりに全国獣医師会,獣医師の長年の懸案,要望が実現したもので,改正獣医師法第1条において,「獣医師の任務」が明定される等,獣医師制度が抜本的に見直されたことにより,獣医師の職責も一段と重いものになったところであります.
第三に,平成7年9月に横浜で開催いたしました世界獣医学大会があります.この大会は,130有余年の世界獣医学協会の歴史の中で,アジア地域で初めて開催され,しかも世界86か国から総勢1万1千名を超える参加者を得た過去最大規模のものとなったものであります.
特に開会式には,天皇皇后両陛下の臨御を仰ぎ,お言葉を賜る等,世界における日本の獣医師の面目を一新することができましたことは,今でも私どもの大きな誇りとするところであります.
さて,目まぐるしく変化する世界情勢,一層多様化する価値観,さまざまな事件の発生等を見るにつけ,時として将来に大きな不安を覚えるところでありますが,このようなことは,獣医学領域におきましても決して例外ではありません.たとえば,狂牛病やエボラ出血熱に代表されるような新興感染症の出現,あるいは腸管出血性大腸菌Oh157による食中毒の発生が社会不安をもたらしたことは,記憶に新しいところであります.
獣医師,獣医業に対する社会の関心が著しく高まってきている今日,私ども獣医師は,その課せられている任務,職責を一層自覚し,従前にも増して積極的に社会に貢献していかなければなりません.
日本獣医師会といたしましては,これまでの歴史の重みに思いをいたし,公益法人としての重大な社会使命を果たしながら,これからも内外に恥じぬ歴史を刻んでいかなければならないと決意を新たにしているところであります.
どうか,今後とも全国獣医師,獣医師会の一丸となったご協力ならびに関係各位の変わらぬご指導,ご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げまして私の挨拶とさせていただきます.
《事業報告》
獣医師会の創立から現在まで,特に最近10年間の事業内容の概略について松山専務理事から報告が行われた. |