参考:ニッパ(ニパ)ウイルス感染症の現状

 また,本会議中発表されたマレーシアの獣医関係者のニッパウイルス感染症に関する報告をまとめると次のようになる.
 A.本年7月15日までに淘汰された豚の合計は 1,073,978頭であった.
 その内訳は
 第I期(発病農場の淘汰):1999年2月から4月の期間で896農場が閉鎖され,合計901,228頭が殺処分された.
 第II期(血清陽性農場の淘汰):1999年5月から7月20日までの期間で,50農場,合計172,750頭が殺処分された.その他農場当たり1ないし2サンプルが陽性を示したところは計203農場あったが,これらの農場については,さらに監視を続ける.
 B.臨床症状
抑鬱,食欲不振,無気力を伴った発熱(39.9℃ないしそれ以上)
呼吸器症状:腹式呼吸あるいは呼吸促迫
痰を伴わない喘鳴性の咳
神経症状(ふるえ,後躯起立不全)
柵に頭を押しつける,こすりつける,かみつく
強直性痙攣,間代性筋痙攣 臨床症状は年齢によってさまざま
4週間齢から6カ月齢の豚では初期は呼吸器症状を示す
  C.剖検所見
・肺:
表面は湿潤で,全体に肥大.
点状もしくは斑点状出血.小葉間水腫.
・脳:
浮腫気味で血管の充血がみられる.
時として点状出血.
組織病理学的には,血管炎と多核巨細胞,細胞溶解,壊疽などが認められた.
 D.疫学的調査
フルーツコウモリ(Megachiroptera)が自然界での宿主である可能性が高い.216サンプル中20サンプルが血清陽性反応を示した.しかし,これらのサンプルからのウイルスの分離はこれからCDCで行われる.
犬は感受性が比較的高い(感染地域での犬では66例中37例,26例中6例が陽性であった).
猫および山羊にも感染する(猫の場合23例中1例陽性).
馬にも感染するものと思われる(感染地域(IPOH)で47例中2例が陽性であったが,発症はしていない.また,競走馬はすべて陰性).
イノシシ(22頭),野ネズミ(211匹),小鳥(81羽),とがりねずみ(21匹)はすべて陰性であった.

 (小澤義博:OIEアジア・太平洋地域代表 家畜衛生週報No. 2566,1999年8月23日号から)

[ 目次に戻る ]