参考:コウモリと狂犬病

Q:コウモリから人への狂犬病の感染はどのようにして起こりますか?
A:一般的には狂犬病は感染動物に咬まれてうつります.しかし感染した人の持っているウイルスがコウモリの狂犬病ウイルスであったとしても,どのようにしてコウモリと接触したのかを調べることは普通 は不可能です[7, 8].19例の狂犬病患者のうちコウモリに咬まれたことがはっきり記録されているのはたったの1例だけです.8例ではコウモリと物理的に接触のあったことは分かっていますが咬まれたという証拠はありません.残り10例についてはコウモリとの接触があったかどうかは証明もされていませんし,否定もされていません.これは恐らく,狂犬病の診断が病気の後期になるまで判明しないことと,患者がコウモリと接触したかどうか家族の人が思い出せないためだと思われます.疫学的な成績からは,狂犬病のコウモリと物理的に接触したことが疑わしい場合でもウイルスの伝播が起こっていることが分かっています[7, 8].まれなケースとしてコウモリからの空気感染によるウイルス伝播が疑われた症例がこれまで2例だけあります[9].この場合は,数百万匹のコウモリが棲息していた洞窟で発生しており,発症した2名はコウモリの唾液で汚染されていた空気を吸入して感染したと考えられています.

Q:狂犬病にかかったコウモリはどういう症状を出しますか?
A:コウモリの場合は狂犬病に感染するとおもに麻痺の症状を出すと考えられています[6].そのためにコウモリはペットにつかまえられやすくなり,くわえられてどこかへ持ち運ばれて行きます.飛ぶことができる場合でも,狂犬病にかかったコウモリは方向感覚を失ったり障害物とぶつかったりすることがあります.狂犬病のコウモリは凶暴性を帯びることもあります.

Q:現在,人がコウモリと接触したときにはどのように狂犬病暴露後免疫を行うように勧告されていますか?
A:これまで分かっている合衆国内のコウモリの狂犬病ウイルスは古典的な型のものですから,感染してもただちに暴露後免疫を行うことで予防することができます.コウモリに咬まれたり,引っかかれたり,あるいは粘膜面 と接触した場合には,そのコウモリが狂犬病検査で陰性であることがはっきりしない限り狂犬病の暴露後予防を行うよう勧告されています[10].コウモリによる咬み傷は浅くて小さいために咬まれても分からない場合があります.咬まれたり引っかかれたりしたことがなくとも何らかの接触(寝ていて目が覚めたら室内にコウモリがいたとか,子供だけにしておいた室内にコウモリがいるのを見つけたときや,精神障害者や人が寝ている室内にコウモリがいた場合)があった可能性が疑われる場合には狂犬病暴露後予防を行うように勧告されています[7].

Q:暴露後の狂犬病治療は現在どのように行われていますか?
A:現在行われている方法は,これまで一度も狂犬病ワクチンの接種を受けたことのない人に対しては,狂犬病免疫グロブリンを接種するとともにワクチンを28日間にわたって5回に分けて筋肉内接種する方法で,接種日は0,3,7,14,および28日目となっています[10].

Q:もし飼い主から家の中でコウモリを見つけたという連絡があった場合はどうしたらいいですか?
A:飼い主には,できるだけコウモリのいる部屋のドアを閉めるようにいってください.そのあとで,動物管理事務所や最寄りの公衆衛生局へ電話をしてコウモリの狂犬病検査をする必要があるかどうかを聞き,必要がある場合には引き取りに来るようにしてもらってください.飼い主には決してコウモリに触らないようにいってください.もしコウモリが外へ逃げてしまって,誰かがそのコウモリに強く暴露されていたら,その人は狂犬病の暴露後免疫を受けなければなりません.しかし,そのコウモリを検査して狂犬病の疑いがないことがはっきりした場合には狂犬病の暴露後免疫は必要ありません.もし,コウモリの頭部が損傷を負っていたら狂犬病検査は不可能なことがあります.
  コウモリが繰り返し家の中へ入ってくるようでしたら,州の自然保護局に連絡を取って,どうしたらコウモリが入っててこないようにできるか,問い合わせをするべきです.

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