ゲタウイルス病
概要
 本病は1978年にわが国の競走馬群に初めて発生し、ゲタウイルスの感染による発熱、発疹および浮腫がみられます。なお、マレーシア語でゴムを意味する「ゲタ」に由来するゲタウイルスは、マレーシアでは蚊から、わが国では健康な豚からも分離され、ウイルスの存在は知られていました。
主な原因
 本病の原因ウイルスであるゲタウイルスの感受性動物として、人を含め多くの哺乳類や鳥類が明らかにされています。
 わが国では本ウイルスに対する抗体分布が全国的にみられ、熱帯および温帯地域では主にイエカやコガタアカイエカ、寒冷地ではキンイロヤブカの媒介でウイルスが伝播されます。流行は蚊の発生時期に一致し、寒気の到来とともに終息します。馬における発生報告は、わが国とインドのみで、わが国の競走馬群の流行でみられた伝播様式は緩やかで不規則です。わが国において生後死亡した子豚や、妊娠豚の流産胎子からウイルスが分離され、豚に対する病原性が明らかにされていますが、インドのサラブレッド繁殖牧場の妊娠馬群における発生では、流産も出産障害も報告されていません。
主な症状
 頸部から肩部、臀部にかけて左右対称にみられる発疹、後肢下脚部の浮腫、下顎リンパ節の腫大、硬直性歩様、軽度な腹痛・黄疸、陰嚢の浮腫などが主な症状です。本症は通常、1〜4日間にわたって38.5〜41℃の発熱を伴います。予後は良好で、回復は多くの症例で発症後1週間、遅くとも2週間です。後遺症や死亡例の報告はありません。自然感染馬にみられる症状はこのように比較的軽度で、多くは不顕性に経過します。感染実験においては、発症馬に水様性鼻汁の漏出が観察され、鼻汁中にウイルスが排出されることが確認されています。
主な予防法
 わが国では、不活化ワクチンが市販されています。ワクチンの予防効果は高く、ワクチン接種馬では抗体応答の悪い馬でもほとんど発病しません。わが国における流行は媒介体となる蚊の発生時期に一致して初夏から晩秋にかけて起こるので、厩舎に防虫用の網を設置したり、発生源の撤去または消毒など厩舎周辺の環境衛生に留意することも大切です。