馬パラチフス(届出)
概要
 本症は、馬パラチフス菌の感染によって起こる馬科動物に特有な伝染病で、届出伝染病に指定されています。わが国では釧路地方で継続的に発生しています。最も多い病態は伝染性流産であり、その他、関節炎、き甲瘻、精巣炎、敗血症などがあります。流産排出物中には本菌が多数存在し、経口感染します。
主な原因
 本症は、馬パラチフス菌の感染によって起こる馬科動物に特有の伝染病です。感染馬や保菌馬から排出された本菌は、直接あるいは飼料などに付着して間接的に経口感染します。妊娠馬が感染すると流産を起こし、その流産排出物中には多量の本菌が含まれます。この流産はしばしば集団発生となることから、本症は馬の伝染性流産として知られています。わが国における馬パラチフスの発生は、古くは東北や北海道を中心に各地で頻繁に認められましたが、近年では北海道の釧路地方にほぼ限局しており、毎年のように発生しています。最近では1997〜1998年に150頭以上の流産が発生しました。
主な症状
 妊娠馬が本菌に感染すると流産が起こります。流産は妊娠後期に多く、しばしば前駆症状なく突然に起こります。流産後には10日程度の発熱がみられ、この間は元気・食欲ともに不振となります。悪露は最初黄白色でしだいに透明になります。流産以外の症状としては、関節炎、き甲瘻、その他全身の各部位に化膿巣などがみられます。雄馬では精巣炎を起こすことがあります。生後まもない子馬が感染した場合には虚弱となることが多く、臍帯炎、慢性下痢、関節炎、敗血症などがみられます。一方、みかけ上治癒した馬の中には保菌馬が残存し、移動に伴って疾病を拡大させます。
主な予防法
 本症に対してワクチンは用いられていません。感染馬は隔離して他の馬への伝播を防止します。流産胎子などの流産馬の排出物は最も危険な感染源であり、必ず焼却処分します。また、これらに汚染した可能性のある厩舎、器材、器具などは十分に消毒を行います。野生動物やペットが感染に関与したことを疑わせる例もあり、対策を図る必要があります。保菌馬の摘発は困難ですが、子馬の時期に感染して回復すると成馬の場合よりも保菌馬となりやすいといわれているので、そのような馬は出来るだけ繁殖に用いないようにします。
 ゲンタマイシンは、過去に分離されたすべての国内株が感受性を示していることから、第一選択薬として適当であると考えられます。