馬モルビリウイルス肺炎(届出・海外)
概要
 本症は、ヘンドラウイルスの感染により起こる、急性呼吸器症状と発熱を示す伝染病です。オーストラリアに広く棲息するオオコウモリが本ウイルスを体内に保有しており、これとの接触またはその体液により伝播すると考えられています。本症は致死性が高い人獣共通感染症で、届出伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 1994年9月にオーストラリアのブリスベン郊外のヘンドラ村にあるサラブレッド競走馬厩舎で、突如、新しいウイルスが出現し、21頭の馬が発病、14頭が死亡しました。また、馬の看病にあたった調教師と助手が発病し、調教師が急性呼吸器症状で死亡しました。死亡した2頭の馬の肺および死亡した調教師の腎臓からウイルスが分離され、馬モルビリウイルスと命名されました。しかし、現在では、ウイルスが分離された地名をとってヘンドラウイルスと改名されています。
 病馬の泡沫性鼻汁に直接あるいは間接的に接触することで本症に感染しますが、空気感染は起こらないと推定されています。
主な症状
 ヘンドラウイルスの潜伏期間は、馬では8〜16日、人では5〜8日と推定されています。1994年9月のヘンドラでの事例では、21頭の感染馬のうち14頭は急性症状を示し、1〜3日以内に死亡するか安楽死に処せられました。残りの7頭のうち4頭は症状を呈しましたが回復し、3頭は不顕性感染でした。41℃以上の発熱と浅い呼吸を示し、多くの例で水様性から血清様の泡沫性鼻汁を漏出しました。下顎・四肢・包皮の浮腫ならびに運動失調も観察され、死亡した馬の末期には多量の泡沫性鼻汁の漏出がみられました。
主な予防法
 現在、有効な予防法と治療法は開発されていません。本症は人にも感染し、有効なワクチンおよび治療法がなく致死的であることから、特別な安全施設での取扱いが義務づけられています。