ニパウイルス感染症(届出・海外)
概要
 本症は、1998年にマレーシアに突然出現したコウモリ由来の新型パラミクソウイルスによる人獣共通感染症です。呼吸器症状と神経症状を主徴とする急性熱性疾患で、届出伝染病・海外伝染病に指定されています。本ウイルスは馬にも感染しますが、馬での発生例はみられません。
主な原因
 本症の原因であるニパウイルスは、最近発見された新しいウイルスです。本ウイルスは、馬モルビリウイルス肺炎の原因であるヘンドラウイルスと近縁で、自然宿主はオオコウモリであることが確認されています。ニパウイルスは、豚や人だけでなく、馬、犬および猫にも感染します。
 オオコウモリの生息地に養豚場を建設したことによって、まず豚にニパウイルスが侵入し、豚が感染源となって豚から豚、豚から人を含む他の動物へ伝播したと考えられています。感染豚の尿、鼻汁などを介した直接伝播のみならず、人工授精や診療器具を介した間接伝播や犬、猫などによる機械的伝搬も重要な伝播要因となり得ることが示唆されています。人から人、馬から馬といった、豚を介さない伝播様式は認められていません。豚および人の場合と異なり、馬では症状や病変は観察されません。1999年に90万頭以上に及ぶ豚を殺処分することによって終息した後は、大規模な発生はありません。
主な症状
 馬の症状については不明な点が多いのですが、感染・発症したすべての種類の動物に呼吸器症状あるいは神経症状が観察されます。呼吸器症状としては、呼吸数増加、開口呼吸、強制呼吸、激しい発咳などがみられます。神経症状としては、頭を押しつける、柵を咬むなどの他に、振戦、破傷風様痙攣、筋肉の収縮とゆるみなどが観察されます。
主な予防法
 有効な予防法・治療法はありません。