破傷風(届出)
概要
 本症は、破傷風菌の感染によって引き起こされます。馬に多発しますが、その他の家畜や人にも感染する人獣共通感染症で、届出伝染病に指定されています。
主な原因
 本症の原因である破傷風菌は広く自然界に分布し、特に土壌から分離され、世界各国で認められていますが、温帯地方よりも熱帯地方、原野よりも耕作地、高地よりも平野で認められるなど、その分布には地域差があります。また、人や各種動物の腸管内にも存在します。馬、牛、豚、めん羊、犬、猫、人などに感染する人獣共通感染症ですが、わが国での発生は比較的まれで、年間10頭程度の散発的な発生例が報告されています。産生される毒素に対する感受性は動物の種類によって異なり、馬が最も高く、次いで牛、人、山羊、めん羊、豚、猿、犬ですが、鳥類は抵抗性を示します。感染経路は主に創傷面からの経皮感染です。釘、木片などによる蹄の傷、胎盤停滞、新生子馬の臍帯、去勢などの手術創などから感染します。また、夏期に発生率が増加する傾向にあります。土壌中の菌は芽胞となって厚くて丈夫な被膜をもち、外界に対する抵抗力が強いので長期間生存するため、汚染された地域の牧場や厩舎に飼育される馬に発生が多くみられます。土壌との関連から本症の発生には地域性が認められています。
主な症状
 破傷風菌が産生する神経毒により緊張亢進と反射亢進を引き起こします。馬では反射亢進、刺激に対する反応性の亢進、眼瞼や瞬膜の痙攣、尾の挙上、続いて骨格筋の強直性痙攣が起こります。咬筋、舌筋、嚥下筋などの痙攣では開口困難、嚥下困難などが、眼筋、鼻筋などでは瞬膜突出、鼻翼開帳などの症状を示します。潜伏期は、外傷時に体内に進入した菌の量と、菌が発育・増殖するのに好適な外傷部位の条件、例えば異物、古釘、土砂、木片などに影響を受けますが、通常2〜5日で1〜2週に及ぶ場合もあります。馬では眼瞼や瞬膜の痙攣、開口困難、咀嚼困難、嚥下困難などを呈し、次いで鼻翼開帳、咬筋の異常な筋緊張による開口障害など典型的な症状を発現します。病勢が進行すると全身の発汗が著しくなり、頸部筋肉の強直、全身筋肉の痙攣、四肢関節の屈曲が出来なくなり開帳姿勢をとります。最終的には呼吸困難で死亡します。
主な予防法
 馬ではトキソイドワクチン接種による予防が実施されています。また、創傷など、感染の危険性が高いと考えられる場合には、抗血清ならびに抗毒素血清を投与します。
 発症が認められた場合は、感染初期には皮下あるいは静脈内に抗毒素血清の大量投与が行われますが、進行したものでは効果はありません。また、抗生物質や筋肉の痙攣、強直の緩和に硫酸マグネシウム、クロルプロマジンなど鎮静剤の投与が行われることもあります。予後は不良です。