類鼻疽(届出・海外)
概要
 本症は人獣共通感染症で、その原因は土壌中に生息する類鼻疽菌です。典型的な症状は、発熱、膿様鼻汁、鼻腔粘膜の結節、肺炎などです。そのほか、下痢、乳房炎、神経症状などもみられます。また、急性例では敗血症死、慢性例では徐々にやせてきます。わが国での発生報告はなく、届出伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 本症は、炭素菌や破傷風菌と同様に類鼻疽菌の感染によって起こる土壌病の一つです。本菌は、熱帯から亜熱帯地域の土壌や自然水中に分布します。
 感染は、土壌や水あるいはじんあいを主な感染源とし、経皮、経気道あるいは経口的に起こります。創傷や強いストレスがある場合は感染しやすいとされています。感染動物からの直接伝播はまれです。わが国では、海外滞在中に感染したと思われる人の症例が数例報告されていますが、家畜での症例はありません。
主な症状
 症状および経過はさまざまです。典型的な急性例では、発熱と食欲不振がみられた後にしばしば中枢神経障害の症状を呈しながら敗血症死します。また、慢性例では多くの場合、食欲減退と元気消失がみられ、次第にやせてきます。その他、膿瘍、運動障害、咳、膿様鼻汁の排出、下痢、はげしい痛み、乳房炎、関節炎などが報告されています。家畜の中で、類鼻疽菌に対する感受性が最も高いのは、山羊、めん羊、ラクダおよびアルパカであり、しかおよび豚は中等度ですが、牛、鳥、犬および猫は強い抵抗性を持っています。馬の類鼻疽菌に対する感受性は中等度ですが、法定伝染病である鼻疽とその症状が類似しているため、類症鑑別が必要です。
主な予防法
 有効なワクチンはありません。わが国は本症の清浄国であることから、その予防には汚染地域から導入される動物の輸入検疫が最も重要です。類鼻疽菌は人には非常に危険な細菌ですので、その取り扱いには十分な注意を要します。本症は、治療を行ってもその後の再発症や再排菌を完全に防止することは困難であり、菌が土壌に定着すれば類鼻疽の継続的な発生を許すことになります。従って患畜は殺処分して焼却し、汚染土壌および環境材料は十分な消毒を行います。