アフリカ馬疫(法定・海外)
概要
 本症は、古くからアフリカ大陸に発生している馬科動物のウイルス感染症で、急性の呼吸困難を伴った馬では死亡率が95%以上に達します。ウイルスは吸血昆虫が媒介するので、流行はそれらの活動が活発な季節に一致し、寒気の到来とともに終息します。本症は法定伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 本症の原因であるアフリカ馬疫ウイルスは、ヌカカなどの吸血昆虫の媒介により伝播します。馬科のなかで、馬は最も感受性が高く死亡率は50〜95%に達し、ラバがそれに続き約50%に達します。常在地のロバは抵抗力があり不顕性に経過しますが、清浄地ではわずかに感受性を示し、死亡率は10%程度です。
主な症状
 本症は、肺型、心臓型および発熱型に大別されます。肺型は3〜5日の潜伏期の後、40〜41℃の高熱、食欲不振、元気消失、呼吸困難、また、呼吸数が毎分60〜75に達する呼吸促迫などを呈し、発作性の咳と泡沫を含む血清様鼻汁を流出し、発病後、数時間で死亡します。心臓型は7〜14日の潜伏期の後、39〜41℃の発熱、元気消失、食欲不振が3〜6日間持続します。その後、側頭部、眼上窩、眼瞼に浮腫が現れます。浮腫は頸部から前胸部にかけてみられますが、下肢にはみられません。末期には眼結膜の充血や舌下部に点状出血がみられ、心不全とはげしい痛みを呈し、発熱後4〜8日で死亡します。発熱後3〜8日で浮腫が消失する症例は回復し、自然治癒します。発熱型は5〜14日の潜伏期の後、39〜40℃の弛張熱を呈し、その他の症状は不顕性もしくは軽度で、眼結膜のわずかな充血、食欲減退、元気消失などです。
主な予防法
 常在地では弱毒生ウイルスの単価ならびに多価ワクチンが使用されていますが、清浄地ではワクチン接種馬のウイルス血症や抗体陽性による感染馬との区別が困難となるので推奨されません。最近では、これらの弱点を補う不活化ワクチンが一部で使用され、サブユニットワクチンも検討されています。わが国のような清浄地では、検疫を強化して海外からの侵入防止に努め、発生がみられた場合の防疫対策としては、病馬の早期摘発・隔離・淘汰および吸血昆虫を防除することも重要で、必要に応じてワクチンの使用を検討します。