ピロプラズマ病(法定・海外)
概要
 本病は、赤血球内に寄生する原虫によって引き起こされる疾患で、夏期の放牧中にダニなどの吸血昆虫により伝播します。40℃以上の間欠熱、貧血および黄疸症状を示し、肺水腫や腎不全により死亡する場合もあります。急性期を耐過した症例の多くは慢性感染馬となり、新たな感染源となります。わが国での発生はありませんが、流行地からの馬の輸入には注意が必要です。本病は法定伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 本病の原因原虫はダニによって媒介され、馬、ロバ、ラバ、シマウマなどの馬科動物が感染・発病します。わが国での発生はみられませんが、発生国からの馬の輸入検疫時にしばしば感染例が摘発されています。媒介ダニは現在 12種類が報告されていますが、これらのうちアミメカクマダニおよびクリイロコイタマダニはわが国にも存在しており、いったん本病がわが国に侵入すれば、蔓延・常在化する危険があります。本病の発生時期は媒介ダニの活動時期と一致します。
主な症状
 潜伏期は6〜21日で、40℃以上の発熱、貧血、黄疸、粘膜の点状出血、下腹部や四肢の浮腫、食欲減退、はげしい痛み、後躯麻痺などがみられます。罹患馬が3週間以上生存すれば末梢血中から虫体は消失しますが、その後1〜4年間は原虫保有馬となります。感染原虫の種類によっては黄疸および貧血が顕著で、重度な赤血球の破壊により、ヘマトクリット値が10%程度に減少することもあります。
主な予防法
 海外伝染病である本病の予防は、水際での摘発による侵入防止が原則です。国内で感染馬が摘発された場合には、直ちに病馬を隔離するとともに、媒介ダニの駆除など、環境対策を実施します。なお、罹患馬は、蔓延を防止するため、必要があるときは都道府県知事の命により殺処分されます。
 ワクチンはありません。
 本病の治療方法は十分に確立されてはいませんが、抗原虫剤としてイミドカルブが最も有効な薬剤と考えられています。