流行性脳炎(法定)
概要
 本症は、毎年夏期に流行する発熱、神経症状および運動器系の異常を呈する法定伝染病で、日本脳炎、東部馬脳炎、西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎など脳炎を起こす吸血昆虫が媒介するウイルス感染症です。人獣共通感染症でもあり、東部馬脳炎、西部馬脳炎およびベネズエラ馬脳炎は海外伝染病に指定されています。なお、1999年に北米東部に侵入した西ナイル熱ウイルスは2001年現在、北米に定着し、馬や人に被害が発生しています。原因ウイルスは日本脳炎ウイルスと同じグループに属し、鳥の体内で増殖し、その鳥の血液を吸った蚊が他の鳥、馬、人などを刺して感染が広がります。北米大陸では、渡り鳥によって分布が拡大しており、わが国への侵入が心配されています。
 東部馬脳炎、西部馬脳炎およびベネズエラ馬脳炎の潜伏期間は、それぞれ1〜3日、2〜9日および1〜6日で、致死率は、それぞれ90%、20〜40%および50〜80%です。症状は日本脳炎に類似しています。
 以下にわが国で発生している日本脳炎を流行性脳炎として記載します。
主な原因
 本症は主にコガタアカイエカの媒介によって牛、水牛、しか、馬、めん羊、山羊、豚、およびいのししに伝播し、人にも感染します。馬や人は高い感受性を持っていますが、症状を現わすことはほとんどありません。感染した牛、馬および人は感染源にはなりません。一方、豚はこのウイルスの増幅動物で、他の動物への感染源となります。
主な症状
 発症した牛や馬は神経症状を示します。潜伏期間は2〜3週間です。発症例では稽留熱と呼ばれる高熱の長期間持続、食欲不振または廃絶、沈うつ、興奮、麻痺などがみられます。また、眼瞼反射を欠くなどの視覚障害、突進・旋回運動などの運動障害も観察されます。2週間ほどで回復するものもありますが、重症例では起立不能になり遊泳運動を示して死亡します。
主な予防法
 不活化ワクチンが予防に使用されています。
 本症には、治療法はありません。