山羊伝染性胸膜肺炎(届出・海外)
概要
 本症は、マイコプラズマによる山羊の重篤な線維素性胸膜肺炎で、届出伝染病・海外伝染病に指定されています。感染すると発熱、咳、呼吸困難、食欲不振および肺炎を呈し、高い死亡率を示します。
主な原因
 本症の原因はマイコプラズマです。本症の発生は山羊だけに限られ、めん羊や牛は発症しません。バッファロー、駱駝および羚羊は感染しますが、症状は示しません。
 主な伝播様式は感染山羊との直接の接触、飛沫核による経気道感染です。年齢、性別を問わず感染します。感染率、致死率ともに高く、群内の感染率は100%で、本症が清浄地に侵入した場合の死亡率は60〜70%、時に90%に及びます。妊娠山羊では流産を起こします。常在地ではかなりの頭数が回復し、保菌動物となりますが、本症を伝播する役割は小さいようです。
主な症状
 本症には、甚急性型、急性型および慢性型があります。甚急性型は、極くわずかな呼吸器症状を示し、1〜3日の経過で突然、死亡します。急性型では、潜伏期は通常6〜14日、時に2〜28日に及びます。41〜43℃の発熱が2〜3日間続いた後、粘稠性鼻汁の漏出、流涎の増加、努力性・疼痛性呼吸、途切れのない咳などの呼吸器症状を呈し、急速に消耗します。症状発現後7〜10日の経過で死亡します。死亡する前に、泡状鼻汁の漏出、とめどない流涎などがみられます。感染率はほぼ100%、死亡率は60%程度ですが、90%に及ぶ場合もあります。本症が清浄群に侵入すると、多くの場合、上記の病態を現わします。慢性型は常在地でみられ、慢性的発咳、鼻汁漏出などがみられます。かなりの頭数が回復し、多数が保菌動物となります。
主な予防法
 不活化ワクチンがありますが、わが国では市販されていません。わが国のような清浄国では侵入防止が最も重要であり、発生した場合には、法規に従い患畜の摘発・淘汰により蔓延防止が図られます。