本症はウイルス性炎症性疾病で、関節炎および脳脊髄炎の2つの症候群がみられます。本症は届出伝染病・海外伝染病に指定されていました。しかし、2002年に関節炎を主徴とする本症が発生したので、海外伝染病の指定は解除されました。 |
本症の原因は山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルスです。本症は世界各国に蔓延していると推測され、特に先進国での発生が多発しています。国際間における本症の広がりは、欧州からの輸入山羊によるものと推測されます。わが国でも2002年8月、初めて長野県内の1牧場で関節炎型の本症が6頭 発生しました。伝播は感染母畜の初乳および常乳を介する経路が主ですが、経気道あるいはその他の感染経路も否定できません。発病率は低く、多くが無症状に終わります。感染動物は免疫抗体を獲得しますが、生涯ウイルスを体内に保持しているので感染源となります。発病するまでの潜伏期は長く、数ヵ月から数年を要します。 |
症状は関節炎型と脳脊髄炎型の2つの症候群に大別され、成畜にみられる関節炎型が最も一般的で、その発病は潜行性であり、進行は緩やかで数ヵ月から数年に及びます。初期症状としては、主に成畜の手根関節または膝関節の腫脹や跛行がみられます。患部の腫脹や関節痛は徐々に増し、他関節へと波及します。患畜の健康状態は悪化し、最終的には起立不能に至ります。また、二次病変として皮膚炎、膿瘍、骨髄炎などがみられます。
振戦、麻痺などの症状を起こす脳脊髄炎型はまれであり、通常4歳以下の幼畜にみられますが、関節炎を起こした成畜にみられる例もあります。進行性の白質脳脊髄炎による後肢の運動失調や麻痺が典型的症状で、その後麻痺は前肢に及びます。関節炎型と脳脊髄炎型は同一個体に起こりますが、通例いずれかが優勢です。
乳房炎のほか慢性的な咳ややせてくるなどの症状を呈する間質性肺炎を引き起こす場合があります。 |
最善の予防策は輸入時における感染動物の検疫、または抗体陽性動物を摘発し、淘汰することです。対症療法の他、特に治療法はありません。 |
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