トキソプラズマ病(届出)
概要
 本病は、猫由来のトキソプラズマ原虫オーシストの感染によって起こり、時に集団発生がみられます。本病は、流死産、虚弱産子など繁殖障害として重要で、届出伝染病に指定されています。子山羊や豚では、高熱が持続する稽留熱および肺炎が顕著で、死亡山羊では全葉性出血性水腫性肺炎とリンパ節の出血・壊死がみられ、実質臓器の点状出血・壊死があります。
主な原因
 猫の糞便中に排出されるオーシストを経口的に摂取することによって感染します。めん羊および山羊は牧草を地面ぎりぎりのところから食するため、地表のオーシストを摂取します。成雌では流死産は全年齢でみられますが、特に未経産の雌で高率に起こります。実験的には10個のオーシスト感染でも流死産が起こると報告されています。抗体陽性率は高く、めん羊では6歳までに、山羊では3歳までに80%に達します。わが国ではめん羊で18〜65%、山羊で36〜86%の抗体陽性率が報告されています。また、原虫保有率も高く、30〜40%が保有します。
主な症状
 めん羊の主要症状は流死産で、新生子羊は生後1週間以内に死亡します。一般に、生後に感染した子羊は無症状または軽度の症状を呈します。実験的には感染後3〜7日目に発熱が観察されます。流死産の場合でも 母羊は他の症状を示しません。山羊では、全年齢で症状がみられます。40℃以上の発熱、下痢、体重減少、元気消失、起立不能、肺炎、腹式呼吸などが観察され、重篤な場合は死亡します。流死産も多く、妊娠80日目以前に初感染した場合はほとんどが流産します。それ以降の場合には流産は減少しますが、多くの場合、感染した子羊や子山羊が生まれます。
主な予防法
 本病に対する有効なワクチンはありません。予防には感染源である猫由来のオーシスト対策を行うことが有効ですが、豚と異なり放牧を主体に飼育されるめん羊および山羊では予防はきわめて困難です。畜舎は可能であれば熱湯による加熱消毒を行います。
 急性期にはサルファ剤が有効です。しかし、シストに有効な治療薬はありません。