本症は、ビスナ/マエディウイルスによるめん羊および山羊のスローウイルス感染症です。アイスランド語で「マエディ」は「呼吸困難」を、「ビスナ」は「次第に消えていくこと、衰弱」を意味し、「慢性進行性肺炎」と「脳脊髄炎」を特徴とする疾病です。本症は届出伝染病・海外伝染病に指定されています。 |
原因ウイルスはビスナ/マエディウイルスです。わが国では、マエディ・ビスナと思われる肺炎や脳脊髄炎の発生はありません。鼻汁や糞便に含まれるウイルスによる水平・経気道感染と、乳汁を介した垂直・経口感染によって伝播します。胎子感染および交尾感染は知られていません。 |
マエディ・ビスナはめん羊の疾病ですが、ウイルスは山羊にも感染し、肺炎や脳炎を起こします。感染から発症まで長期間を要し、数ヵ月から数年間かかる場合もあります。マエディは、主として3〜4歳以上のめん羊にみられます。最初は元気消失を示し、徐々に呼吸が荒く、時として乾いた咳を伴います。症状は、3〜8ヵ月間ゆっくり進行し、細菌の二次感染がなければ、呼吸困難で死に至ります。
ビスナはマエディと比較し潜伏期が短く、2歳以上のめん羊が発症します。マエディと同様、最初は群から取り残されることから発見されます。その後、後肢の麻痺による歩行蹌踉から起立不能となります。症状が進むにつれ、名前の由来となった衰弱が顕著となります。 |
ワクチンや治療法はありません。感染から発症までの経過が長く、また不顕性感染も多いので、抗体陽性動物の摘発・淘汰が重要です。子羊の感染は、主に母乳中に含まれるウイルスによるため、感染めん羊が出産した子羊は出産直後から人工乳で育てれば感染を免れますが、実用的な手段ではありません。 |
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