本病は、野兎病菌の感染によって起こる人獣共通感染症で、届出伝染病に指定されています。本来は兎類、げっ歯類、ビーバーなどの野生動物の疾病ですが、多種類の哺乳類および鳥類にも感染します。敗血症を起こし、発熱、呼吸器症状、関節の硬直、下痢などの症状を呈します。 |
野兎病菌は、わが国では、かつて福島、山形および千葉県の山岳地帯に常在していたため、本病は地方病的に存在しましたが、現在はまれに発生するのみです。本病は北半球のほとんどの国で発生しています。
感染・伝播はダニ、サシバエ、蚊などによる機械的伝播、感染動物や汚染物への直接接触、汚染物を含んだ空気の吸入、加熱不十分な感染動物の肉や汚染水の摂取によって起こります。病原体への接触は直接感染の危険性が高いため、汚染物を取り扱う場合は、手袋、マスク、ゴーグルなどを着用し、注意する必要があります。 |
一般的に家畜は低感受性であり、顕著な症状を示しませんが、高感受性動物では敗血症に伴う発熱、呼吸数・心拍数の増加、嗜眠、食欲不振、硬直歩行などの症状がみられ、2〜10日の経過で死亡します。動物ではまれですが、人では感染局所の潰瘍・膿瘍および局所リンパ節の腫大がみられます。
めん羊では高致死率の発生例があり、敗血症に伴う症状の他、咳、下痢、衰弱などを伴うことがありますが、麻痺はみられません。 |
家畜への感染予防には、野生動物との接触を避け、ダニ類の駆除が大切です。強毒の野兎病菌に接触する危険性が高い人には弱毒生ワクチンが有効であり、米国やロシアでは接種されています。治療にはアミノグリコシド系、テトラサイクリン系、マクロライド系などの抗生物質が有効です。 |
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