本症は、サルモネラ菌の感染により引き起こされる、急性あるいは慢性の腸炎です。腸炎に加えて流死産や乳房炎を主徴とします。本症は届出伝染病に指定されており、人獣共通感染症でもあります。 |
本症の原因はサルモネラ菌で、急性あるいは慢性の腸炎と流死産がみられます。
本症の発生は世界各国でみられ、わが国でも増加しています。生後1ヵ月以内の若齢動物は感受性が高く、急性例では1〜7日で敗血症により死亡します。感染は主に数年にわたって排菌がみられる保菌動物の糞便中に排泄された本菌の経口感染が主体ですが、呼吸器や結膜などを介した感染もみられます。本菌は腸管内で増殖し、腸炎を起こします。また、粘膜に侵入し、腸の傷害や下痢の原因となる細胞毒や腸毒素を産生します。本菌は体内で長く生存します。乳汁や膣分泌物にも本菌が排泄され、排泄された本菌は数ヵ月は生存し、感染源となります。糞便に汚染された敷きわら、飼料、飲料水なども感染源となります。さらに、ネズミ、鳥類なども汚染・感染源となり、牧場などにおける本菌の清浄化は多くの場合は困難です。 |
急性・慢性の下痢、重篤な例では菌血症や敗血症を呈します。急性例では発熱、食欲減退、悪臭のある黄色下痢便・粘血便、やせ、脱水などがみられます。成熟動物では症状を示さない例が多いのですが、ストレスや他の疾患に伴なって散発的に水様性下痢ならびに血便などを示す例もみられます。妊娠動物では流死産がみられます。 |
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予防には発症牛や保菌動物の隔離、感染動物の淘汰などが行われます。また、飼育環境の改善、集団飼育の場合には初乳飲用の励行、発生畜舎への若齢動物の導入禁止なども予防効果があります。
治療には抗菌剤や抗生物質の投与が行われますが、本菌を排除することは多くの場合は困難です。発症例では抗生物質に加えて、止寫剤投与、水分補給などの処置を行います。 |
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