本症は、破傷風菌の感染によって引き起こされ、届出伝染病に指定されています。馬に多発しますが、その他の家畜や人にも感染する人獣共通感染症でもあります。 |
本症は破傷風菌の感染によって引き起こされ、本菌が産生する神経毒により筋肉の強直・痙攣を呈する急性の感染症です。本菌は、炭疽とならんで土壌病の代表的菌種とされます。
わが国での発生は比較的まれで、年間10頭程度と散発的に発生します。産生毒素に対する感受性には種差が認められ、馬が最も高く、次いで牛、人、山羊、めん羊、豚、猿、犬などに感受性がありますが、鳥類は抵抗性を示します。感染経路は主に創傷面からの経皮感染であり、釘、木片などによる蹄の傷、胎盤停滞、新生子の臍帯および去勢などの手術創からも感染します。土壌病であるため、低い感染率を示します。また、夏期に発生率の増加傾向がみられます。土壌中の本菌は芽胞となって長期間生存するため、汚染牧場に飼育される場合に多数の発症例がみられます。本症の発生には地域性がみられます。 |
潜伏期は通常2〜5日で、1〜2週に及ぶ場合もあります。破傷風菌が産生した神経毒により緊張亢進と反射亢進を引き起こし、木馬様姿勢、瞬膜突出、開口困難などがみられます。刺激に対して過敏となり、耳翼を強直させ、続いて骨格筋の強直性痙攣が起こります。咬筋、舌筋、嚥下筋などの痙攣では開口困難、咀嚼困難および嚥下困難、眼筋および鼻筋の痙攣では瞬膜突出、鼻翼開帳など特徴的な症状を示します。次いで鼻翼開帳、開口障害など典型的な症状を発現し、飲水困難による脱水、流涎、発汗なども観察され、最終的には呼吸困難で死亡します。 |
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馬ではトキソイドワクチン接種による予防が実施されています。また、創傷など、感染の危険性が高いと考えられる場合には抗血清ならびに抗毒素血清を投与します。
発症が認められた場合は、感染初期には皮下あるいは静脈内に抗毒素血清の大量投与が行われますが、進行例では効果はありません。また、抗生物質や筋肉の痙攣、強直の緩和に硫酸マグネシウム、クロルプロマジンなど鎮静剤の投与が行われることもあります。予後は不良です。 |
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