本症は、土壌中に生息する類鼻疽菌の感染による人獣共通感染症です。典型的な症状は、発熱、膿様鼻汁、鼻腔粘膜の結節、肺炎などです。その他、下痢、乳房炎、神経症状などもみられ、急性例では敗血症死、慢性例では徐々にやせてきます。家畜の中でも山羊とめん羊は重症例が多く、高い致死率を示します。わが国での発生はなく、届出伝染病・海外伝染病に指定されています。 |
本症の原因である類鼻疽菌は、熱帯から亜熱帯地域の土壌や自然水中に分布します。感染は土壌や水あるいはほこりを主な感染源として、経皮、経気道あるいは経口的に起こります。創傷や強いストレスがある場合は感染しやすいようです。感染動物からの直接伝播はまれです。人および動物の類鼻疽は、東南アジアと北部オーストラリアが多発地域です。山羊の類鼻疽はオーストラリアと中国で、めん羊はオーストラリアとマレーシアで、しかはオーストラリアで、それぞれ発生しています。わが国では、海外滞在中に感染したと思われる人の症例が数例報告されていますが、家畜の症例報告はありません。 |
家畜における症状および経過はさまざまです。典型的な急性例では、発熱と食欲不振がみられたあとにしばしば中枢神経障害の症状を呈しながら敗血症死します。また、慢性例では食欲減退と元気消失がみられ、多くの場合、次第にやせてきます。その他、膿瘍、運動障害、咳、膿様鼻汁の排出、下痢、はげしい痛み、乳房炎、関節炎などがみられます。家畜の中で、類鼻疽菌に対する感受性が最も高いのは、山羊、めん羊、ラクダおよびアルパカで、しかと豚は中等度、牛、鳥、犬および猫は強い抵抗性を持っています。山羊やめん羊は、高い致死率を示します。また、類鼻疽菌に感染した山羊では35%が乳房炎を、めん羊では100%が肺病変を呈することが報告されています。 |
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有効なワクチンはありません。わが国は本症の清浄国であることから、その予防には汚染地域から導入される動物の輸入検疫が最も重要です。類鼻疽菌は人に対しかなり危険な病原体の一つに分類されており、その取り扱いには十分な注意を要します。本症は、治療を行ってもその後の再発症や再排菌を完全に防止することは困難であり、本菌が土壌に定着すれば類鼻疽の継続的な発生を許すことになります。したがって、患畜は殺処分して焼却し、汚染土壌および環境材料は十分な消毒を行います。 |
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