めん羊および山羊のスクレイピーおよびしかの慢性消耗性疾病は、伝達性海綿状脳症またはプリオン病と呼ばれる疾病に分類され、神経系の異常を特徴とする法定伝染病です。牛海綿状脳症や人のクロイツフェルト・ヤコブ病もプリオン病に含まれます。 |
感染性蛋白質「プリオン」が本症の原因と考えられています。プリオンは熱および消毒薬に強い抵抗性を示します。
めん羊のスクレイピーの発生は、オーストラリアおよびニュージーランドを除くほぼ世界中でみられ、わが国でも散発的な発生があります。本症の潜伏期は2〜5年で、生後間もない子羊が経口的に感染すると考えられています。発生農場および導入元農場における過去のスクレイピー発生の有無、めん羊の導入歴についての調査が必要です。
しかの慢性消耗性疾病は北アメリカおよびカナダで発生が報告されています。野外発生はオグロジカ、オジロジカおよびエルクの3種類のしかでみられます。その他の国・地域での発生はみられません。発症は3〜5歳の動物に多発し、感染経路は不明です。 |
スクレイピーの主な症状として、掻痒症、脱毛、運動失調、異常歩様、音や光に対する過敏、やせ、異様な咀嚼行動、多飲および少量の頻回尿などがみられます。スクレイピーの症状および経過は一様でなく、これらの症状も必発ではありません。
しかの慢性消耗性疾病の初期の症状は、同じグループの動物や飼養者に対する行動の変化です。病気の進行に伴って昏睡や沈うつ、末期には多飲多尿、流涎、異常歩様、振戦などがみられます。症状は数ヵ月から数年の経過をとりますが、掻痒症はみられません。しかの慢性消耗性疾病という病名の示すとおり、長期にわたる進行性の体重の減少が特徴となります。多くの場合、誤嚥性肺炎を併発して死に至ります。 |
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