本病は、牛結核菌の呼吸器感染による慢性感染症です。結核病巣が主に肺および頸部・胸腔内リンパ節に形成され、重症例は発咳、呼吸困難などを呈し、法定伝染病に指定されています。「家畜伝染病予防法」では、牛、水牛、山羊およびしかが対象家畜ですが、しかは本菌に対して特に高い感受性を示し、全身結核により高い死亡率を示します。米国では結核病に罹患したしかから食肉性野生動物への伝播が問題となっています。 |
本病の原因は、牛結核菌です。わが国では本菌によるめん羊および山羊での症例はほとんどありませんが、しかの集団発生例があります。1984年に秋田県内の動物園で17頭規模の日本しか群において、1頭の有病巣畜が死亡し、他の7頭も病性鑑定で結核病と確認されました。次いで、1988〜1990年までの3年間に、青森県内の養鹿場で東南アジア産のミズシカおよびバイカジカ計288頭のうち、47%にあたる136頭が、また自家産の同居していた鹿146頭中66%にあたる96頭が結核病により死亡しました。 |
感染動物の大部分は不顕性感染の状態になり、外見上はほとんど異常はみられません。しかし、発咳、あくびの多発などの呼吸器症状とやせ、被毛失沢を呈した進行症例では、数週間で死亡します。有袋類のフクロギツネで頻発する皮膚結核病はほとんど発生しません。 |
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新規の動物導入にあたってはツベルクリン反応検査を必須とします。患畜発生群については、全頭を対象に年数回のツベルクリン検査を実施し、陽性個体の殺処分とともに疑陽性畜の自主淘汰を行います。感染動物舎はオールアウトし、石灰による徹底的な消毒後に清浄群からの新規導入を図り、汚染動物舎の再使用は避けます。抗菌剤による化学療法は実施しません。 |
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