本症は、炭疽菌の感染によって起こる急性敗血症性疾病です。牛、馬、しか、めん羊、山羊などの草食獣は炭疽菌に対して高い感受性を示します。本症は法定伝染病に指定されており、人にも感染する人獣共通感染症としても知られています。 |
本症の原因である炭疽菌は典型的な土壌菌で、自然界では長期間生残し、動物に感染を繰り返します。感染した動物の血液、体液、死体などが土壌や体表を汚染し、炭疽汚染地帯を作ります。
致死率は高いのですが、発生規模は小さく、概して散発的です。炭疽菌が個体から個体へ直接伝播されることはほとんどありません。感染経路は主に経口感染および創傷面からの経皮感染です。
本症の発生は世界各国でみられます。わが国では、昭和の初期まで、牛および馬を中心に年間数百頭の発生が記録されています。しかし、発生は急減し、この10年間では、1991年および2000年に牛での発生が1例ずつ記録されているにすぎません。めん羊および山羊では1949年と1962年にそれぞれ1例の発生がありましたが、それ以降の発生はありません。 |
牛および馬と同様にめん羊、山羊などの感受性の強い動物では、定型的な急性敗血症を呈して急死します。潜伏期は1〜5日と考えられています。症状は体温の上昇、眼結膜の充血、呼吸・脈拍の増数、さらに進行すると、可視粘膜がはれて、青黒くなり、肺水腫により呼吸困難を呈し、血液は凝固時間が延長し、濃縮してタール状となり、尿毒症による腎障害を呈して死亡します。 |
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牛および馬の予防には生菌ワクチンが用いられています。本症が生前に診断されることは少なく、治療することは事実上ほとんどありません。同居家畜に対して緊急予防的にペニシリンなどの抗生物質を注射することがあります。 |
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