本症は、発熱、神経症状および運動器系の異常を呈する法定伝染病で、毎年夏期に流行します。日本脳炎、東部・西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎など吸血昆虫が媒介するウイルス感染症であり、人獣共通感染症でもあります。しかし、わが国では日本脳炎のみが発生しています。ここでは流行性脳炎として日本脳炎を記載します。なお、1999年に北米東部に侵入した西ナイル熱ウイルスは2001年現在、北米に定着し、馬や人に被害が発生しています。原因ウイルスは日本脳炎ウイルスと同じグループに属し、鳥の体内で増殖し、その鳥の血液を吸った蚊が他の鳥、馬、人などを刺して感染が広がります。北米大陸では、渡り鳥によって分布が拡大しており、わが国への侵入が心配されています。 |
本症の原因である日本脳炎ウイルスは、主にコガタアカイエカの媒介によって牛、水牛、しか、馬、めん羊、山羊、豚およびいのししに伝播します。馬および人は感受性が高いのですが、脳炎の発症例はきわめてまれです。タイでの調査では、めん羊の抗体保有率は馬よりも高いことがわかりました。実験的には山羊は脳炎を発症しますが、野外発生例は知られていません。しかし、めん羊や山羊の日本脳炎は疾病としても感染源としても問題になっていません。一方、豚はこのウイルスの増幅動物で、他の動物への感染源となります。 |
牛や馬は、非化膿性脳炎のため神経症状を示します。妊娠豚が感染すると、流死産などの異常産が起こります。また、種雄豚では造精機能障害が起こることもあります。
牛および馬の発症例では高熱が長期間持続し、食欲不振または廃絶、沈うつ、興奮、麻痺などがみられます。眼瞼反射を欠くなどの視覚障害、突進、旋回運動などの運動障害も観察されます。馬では2週間ほどで回復するものもありますが、重症例では起立不能になり遊泳運動を示して死亡します。なお、しか、めん羊および山羊での発症例はないので、どのような症状を示すかは不明ですが、牛、馬および豚の発症例とほぼ同様な症状がみられると考えられます。 |
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