本症は、口蹄疫ウイルスの感染によって起こる偶蹄類の急性熱性伝染病で、口、蹄および乳房周辺の皮膚や粘膜に形成される水疱が主な症状です。幼畜の致死率は時に50%を超えることがありますが、成畜では死亡例はほとんどみられません。ウイルスの伝染力が著しく強いことに加えて、発症後に生じる発育・運動・泌乳障害による直接的な経済的被害は甚大なものになります。法定伝染病・海外伝染病に指定されています。 |
本症の原因は口蹄疫ウイルスで、伝染力が強く、豚、牛、水牛、めん羊、山羊などの主要家畜をはじめ、60種類を超える動物が感染します。
発生はほぼ世界的にみられ、1997年に台湾、2000年には日本、韓国、モンゴルおよび極東ロシア、2001年には英国を中心に発生しました。なお、わが国は2000年9月に国際獣疫事務局から口蹄疫清浄国として承認されました。
本ウイルスの家畜における感受性は牛が最も高く、次いで豚、めん羊、山羊の順です。一般に、めん羊および山羊における症状はほとんどみられません。しかに関する情報は少ないのですが、数種のしか科動物において感染・発症がみられます。水疱が形成される0〜5日前からウイルスを排出し、接触により容易に周囲の感受性動物に感染します。また、高湿度、短日照時間、低気温などの気象条件によっては空気伝播します。国際伝播の原因は、汚染家畜・畜産物の流通、船舶や航空機の汚染厨芥、風や人、鳥による伝播などさまざまです。特に、汚染畜産物内のウイルスは長期間残存するため大きな感染源となります。 |
初期には、発熱、食欲不振、鼻漏、流涎および跛行がみられ、その後、舌、口唇、歯齦、咽頭、口蓋などの粘膜、蹄部および乳房・乳頭に水疱が現れます。水疱は急速に数と大きさを増しますが、短期間のうちに破裂し、上皮が剥離後、潰瘍やびらんに移行します。蹄部の水疱は細菌の二次感染を受けやすく、時には蹄が離脱する場合があります。病変は細菌の二次感染がなければ数週間で治癒しますが、ウイルスにより病変の重篤度は異なります。 |
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口蹄疫が発生した場合は、「家畜伝染病予防法」に基づいて、患畜および感受性のある接触動物を殺処分するとともに、汚染した恐れのある糞便、飼料、畜舎、輸送車などの消毒、人および家畜の移動制限などを徹底的に行い、蔓延を防止します。本症は極めて伝播が速いため、防疫の成否は患畜の早期発見と速やかで徹底的な初動防疫を講じることにあります。
有効な治療法はありません。 |
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