要 約
日本猫の雌の同腹子3頭のうち小脳性運動失調を主徴とした2頭ではリンパ球のβ-ガラクトシダーゼの活性が低く,延髄で膜様細胞質内封入体(MCB)が認められた.いっぽう,運動失調を示さなかった1頭での残存酵素活性は正常猫と発症猫の中間値を示し,それぞれGM1-ガングリオシドーシスのホモ接合体およびヘテロ接合体が示唆された.聴性脳幹誘発電位検査ではI波やV波の潜時遅延や閾値上昇が認められる個体があった.しかし,発症猫に共通して認められた異常は,伝音障害を示唆するI波とV波の振幅比(I/V AR)の低下と,脳幹の中枢伝導時間とみなされているI波―V波頂点間潜時(I-V IPL)の延長であった.末期には中枢性自発眼振や嚥下困難などの神経学的異常が見られるようになったが,高次脳機能は維持され,BAEPを指標にした脳幹機能が病期の進行に伴い悪化することはなかった. ―キーワード:聴性脳幹誘発電位,猫,GM1-ガングリオシドーシス.
------------------------------日獣会誌 62,148〜154(2009) |
† 連絡責任者: |
川崎安亮(鹿児島大学農学部獣医学科基礎獣医学講座生理学分野) 〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-24 TEL・FAX 099-285-8715 E-mail : kawasaki@agri.kagoshima-u.ac.jp |
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