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今年は丑年である.十二支の二番目の動物だ.丑は直接牛を表すわけではないが,日本では十二支に動物を当てる.そして丑は牛というわけだ.そこで,丑年の年頭に当たり,丑または牛に関する連想ゲームを少々. まず丑は時刻及び方角の名称でもある.子供の頃よく聞いたセリフに「東山三十六峰草木も眠る丑三つ時,突如響き渡る……」というのがあった.要するに真夜中にチャンバラが始まるということなのだが,正確に言うと午前2時から2時半を指す.丑の刻参りというのもある.人を呪い殺すためのおまじないの時間だ.これは怖い.一方方角としては北から東へ30度である.昔ヒッチコックの名作「北北東に進路を取れ」という映画があったが,その北北東がほぼ丑の方角である.これは覚えやすい.ヒッチコックを連想すればよい. さて動物としての牛は私たちの領域,連想ゲームでは止まるところを知らないが,敢えて取り上げてみよう.そもそも牛の祖先は5〜6千万年前に地球上に現れている.人の登場よりず〜っと前だ.その人間が先輩の牛を家畜化したのはおよそ紀元前6,500〜9,000年とされている.家畜としては古手の方だろう.このように世界中で牛は家畜化されていったが,数少ない家畜化されなかった牛にアメリカンバイソンがある.今でこそ保護の対象になっているが,アメリカインデアンの時代には狩猟するだけで十分な数があり家畜化の必要はなかったのであろう.それに見た目がいかにもいかつい.若い頃,アメリカはサウスダコタ州の州立公園で,一人車で旅行中このバイソンに囲まれたことがある.彼らの移動中にたまたま出くわしたのであるが,ドドッと地響きをたてて前後左右を移動する彼らはいかにも猛獣という感じでかなり怖かった.しかし相手はじっと動かぬこちらを避けて通ってくれ,意外と優しそうな眼をしており,なんとなくほっとしたことを覚えている.しかしあの容姿では怖く家畜化は難しかったのかも知れない.同じアメリカ生まれの野球で,投手練習場をブルペンと言う.牛の囲い場だ.あれはカウボーイ時代の名残であろうか. 牛を題材にした落語に「牛ほめ」というのがある.牛は「天角地眼,一黒陸頭,耳小,歯違う」がいいと言って褒める.長くなるのでこの落語の落ちは省略するが,同じような牛の褒め言葉は歌舞伎「菅原伝授手習鑑」にも出てくる.興味があるお方はお調べ願いたい. 昨年のNHK朝の連続ドラマ「瞳」で,瞳のおじいちゃんが「お前牛か,さっきからもうもうとばっかり言って」というシーンがあった.これで思い出したのが,世界の黒澤明監督の名画「椿三十郎」である.三十郎が若侍達に「お前ら丑年生まれか?なにかと言やあ突っかかってきやがる」と言ってたのだ.牛は親しみやすい動物だが,文句をつけるのにも使いやすいようだ. | |
(子) |