要 約
ラットに皮膚切開および避妊・去勢手術を実施し,臨床現場で一般的に用いられている6種類の縫合糸に対する病理組織学的変化について比較検討した.避妊群は術後1カ月,去勢群は術後2カ月で安楽殺し,病理組織学的検索を行った.剖検時,皮膚切開部位では線維化が認められ,避妊・去勢部位では大小の黄色腫瘤が形成されていた.病理組織学的には,縫合糸を取り囲んださまざまなステージの異物肉芽腫が特徴であった.炎症細胞浸潤は皮膚切開部位に比べ,避妊・去勢部位において強く認められた.縫合糸の種類別では,絹糸とマルチフィラメント吸収糸を用いた症例において顕著であった.本実験の結果,どの縫合糸に対しても異物肉芽腫が形成されること,縫合糸が存在するかぎり組織反応が持続すること,ならびに手術部位や縫合糸の素材によって組織反応の差が生じることが示唆された. ―キーワード:実験病理学,ラット,縫合糸肉芽腫.
------------------------------日獣会誌 61,873〜879(2008) |
† 連絡責任者: |
朴 天鎬(北里大学獣医学部獣医学科獣医病理学研究室) 〒034-8628 十和田市東23番町35-1 TEL 0176-24-9433 FAX 0176-23-8160 E-mail : baku@vmas.kitasato-u.ac.jp |
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