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原 著

犬の腫瘍5,819例の疫学的分析

信田卓男   圓尾拓也   川村裕子   武田晴央   斑目広郎
茅沼秀樹   菅沼常徳

麻布大学附属動物病院(〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71)

2007年12月3日受付・2008年3月28日受理

要   約

 麻布大学附属動物病院に来院した犬26,072例(1985年4月〜2006年3月)のうち,5,819例が腫瘍と診断された.これらの腫瘍群に対して,年齢,性差,腫瘍の悪性比率,犬種,部位別の腫瘍発生頻度を分析した.腫瘍群の平均年齢は9.2±3.3歳であり有意に高齢であった.性差は雄1:雌1.45と有意に雌に腫瘍の発生が多かった.腫瘍の発生の相対危険度を示すオッズ比は,ゴールデンレトリバーが1.5倍,シェットランドシープドッグが1.4倍と高く,ミニチュアピンシェルとキャバリアが有意に低かった.部位別で腫瘍の発生頻度や犬種等を分析すると明らかな有意性が確認された.日本犬種は,肥満細胞腫を含む皮膚腫瘍の発生頻度が有意に高かった.悪性リンパ腫のオッズ比は,コリー,コッカースパニエル,ゴールデンレトリバーが米国の報告に比べ2倍以上の高値を示した.以上の結果は,犬の腫瘍の診療に有用な指標となると考えられた.
―キーワード:犬,腫瘍,疫学研究.

------------------------------日獣会誌 61,867〜872(2008)




† 連絡責任者: 信田卓男(麻布大学附属動物病院)
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