要 約
2006年6月,山羊68頭飼養する農場で,子山羊5頭が歩様異常と起立不能を呈した.発症山羊3頭を検索した結果,1頭の末梢白血球から山羊関節炎・脳脊髄炎(CAE)ウイルス特異遺伝子が検出されたが,病理組織学的所見はCAEの特徴的病変とは異なり,共通して脊髄腹根軸索変性と腹角神経細胞体の中心性色質融解が認められた.また肝臓および血清銅濃度は,著しく低値を示したため銅欠乏症と診断した.同居山羊の血清銅濃度も低値であったが,給与飼料中の銅含量は適正であり,続発性の銅欠乏が示唆された.同農場は同年4月に放牧地へ石灰散布しており,この牧草の摂取による影響が考えられたため,石灰散布試験を実施し,牧草中微量元素を測定した.試験区では対照区に比べ,銅吸収阻害作用のあるモリブデンが増加したため,石灰散布が銅欠乏の一因になったと思われた. ―キーワード:起立不能,銅欠乏症,山羊,石灰散布,モリブデン.
------------------------------日獣会誌 61,853〜857(2008) |
† 連絡責任者: |
松本裕一(福島県県中家畜保健衛生所) 〒963-8041 郡山市富田町字満水田2 TEL 024-923-4305 FAX 024-923-4555 E-mail : mathumoto_yuithi_01@pref.fukushima.jp |
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