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第29回世界獣医学大会に出席して
山根義久† (日本獣医師会会長)
第29回世界獣医学大会(WVC)は,平成20年7月27〜30日の間,カナダ・バンクーバーのバンクーバーコンベンション&エキジビションセンターにて開催された. 青い空と海に恵まれたバンクーバーは,なだらかに続くコースト山脈の麓に位置し,美しい自然に囲まれているばかりでなく,都会としてのインフラも整った都市である.ウインタースポーツに最適な立地条件を備えたこの地は,2010年の冬季オリンピックの開催予定地でもある. WVCの会場となった会議場は,バラード・インレット(入り江)に面した突堤に建設され,市内の主要交通機関であるスカイトレンのターミナルのウォーターフロント駅や,バンクーバーとノースバンクーバーを結ぶフェリー(シーバス)の乗り場に近い交通至便な地域にある. 8月27日(水)に成田を出発し,同日午後,バンクーバーに到着して夕刻に開催された歓迎レセプションに出席した.各国から約1,700名の登録者を得て開催された本大会には,日本からも13名が出席し,招待講演者の小沢義博氏による「疾病の調査,バイオセキュリティ及び緊急時のための準備」の他,6題の演題が発表された. 私が日本代表として出席したWVAの総会は,7月30日正午から,会議場近くのホテルパンパシフィックにおいて開催された. 総会においては,まず,評議員会,三役会議の審議結果等,各種の報告が行われたのち,会則と施行細則等の改正について審議された. 会則の改正においては,評議員の選出母体となる地域分け(従来は,西ヨーロッパ,東ヨーロッパ,アフリカ,北アメリカ,ラテンアメリカ,東アジア・オセアニアの6地域)が適正でないとして,新しい地域分け(ヨーロッパ,中東・北アフリカ,アフリカ,北アメリカ,ラテンアメリカ,東アジア・オセアニア)が提案され,協議された.本件については,新しい地域分けを行うこととして会則の変更が可決・承認されたが,協議の段階で,中東・北アフリカ地域とアフリカ地域を区分けした理由が明確でない等の意見が出され,今後も検討を継続することとされた. 施行細則の改正においては,Eメールによる会議に関する規定を明文化すること等が承認された.続いて,会計報告等が行われた後,次期役員の選挙に入った. WVAにおける評決権数は,会費の額と同様に,各国の獣医師会に所属する獣医師数を基礎として算定されるため,構成獣医師数の多い日本は,最大の評決権を有する米国の20票に次いで,2番目の10票の評決権を有する有力国である.したがって,特に選挙の際には,各候補から様々な働きかけを受けることになる. 今回の会長選挙では,台湾のJohnson Chiang氏,チュニジアのFaouzi Kechrid氏の両前副会長に加えて,オランダからTjeerd Jorna氏の3名が立候補した.Chang氏には東アジアから初のWVA会長就任が期待されたが,投票の結果,僅差でJorna氏に敗れた. 副会長にはKechrid氏が再任され,カナダのDuane Landals氏が新任された.さらに,前会長である米国Leon Russell氏の役員(Immediate Past President)就任が承認され,地域代表の評議員がそれぞれ選任された.東アジア・オセアニア地域の評議員にはオーストラリアからJakob Malmo氏,タイからPratuang Sudsakorn氏が選任された. 最後に,今後のWVCの開催地について協議された.次回のWVCは,3年後の2011年10月南アフリカ・ケープタウンでの開催が決定されているが,その後の開催については,本来は2011年の3年後の2014年が開催年にあたるが,2013年がWVAの設立150周年(第1回の大会は1863年7月,ドイツ・ハンブルグで開催)であることから,この年に開催することとされ(2013年の次の開催は,期間調整のため2017年とされた.),開催地はチェコ・プラハに決定されて,総会は閉会された. 総会終了後,閉会式とパーティーが行われ,参加者はそれぞれに最後の夜の名残を惜しんでいた.翌7月31日にバンクーバーを出発,日付の変わった8月1日夕,成田空港に到着した.
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