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意見(獣医学系大学生の声)

夢は地域の小動物臨床獣医師

森川達也(日本大学生物資源科学部獣医学科5年)

森川達也
 誰もが一度は尋ねられたことがあるだろう.「あなたの将来の夢は何ですか?」と.
 私は幼い頃,将来の夢として様々なものを思い描いていた.その夢は,漫画家であったりパイロットであったりと一貫したものではなく,高等学校に進学する頃には自分が本当に何になりたいのか分からなくなっていた.
  そんな高校2年生の夏休みに,飼っていた犬を亡くした.あまりに突然のことで,時間帯も早朝のため,近所の動物病院はどこも開いていなく,ただ目の前で息を引き取るのを見ているだけであった.原因は未だに不明である.これが私にとって初めての「家族の死」であった.
 埋葬を終えて家に帰り,「獣医師になりたい」という思いが突然湧き上がってきた.獣医師になって,時間帯に関わらずいつでも急患に対応できる病院で働きたいと.この時から私の将来の夢は小動物臨床獣医師となり,幸運なことに日本大学生物資源科学部獣医学科に入学することができ,はや5年が過ぎた.今でも私の夢は変わっていない.
 ひと月程前,私は友人と共に香川県のとある動物病院へ一週間の実習に行ってきた.その病院では毎日途切れることなく大勢の患者動物が訪れ,獣医師とAHTが対応に追われていた.また,診療時間以外の急患にも対応できる体制が整っており,私が思い描いた理想の病院のように思えた.その実習では様々な症例を見ることができ,多くのことを学んだ.しかし獣医学以上に,病院を経営していくことの大変さや院長の人生観,それに地方の病院と都市部の病院の違いなどについても学ぶことができた.
 現在,地方と都市部では獣医療にもかなりの差があると聞いた.地方でしか見られない寄生虫などがあることもその一例だが,都市から離れるほど獣医学は数年単位で遅れており,また,単純に病院の数も,地方は都市部より少ないようである.そして,一般に地方に比べて都市部では,若い新米の獣医師が手術をする機会は少ないという話を聞いた.外科手技の技術は実際に経験しないと身に付かないであろうし,臨床獣医師として働くうえで外科手技は必須だと思うので,卒業後に就職するとしたら外科手技を学べる地方の病院を選びたいと考えている.
 私の将来の夢は,小動物臨床の現場で臨床獣医師として働くことである.まだ明確なビジョンがあるわけではないが,地方の動物病院に就職して経験を積み,いずれは実家の近辺で小動物臨床に従事したいと考えている.




† 連絡責任者
(担当教員):
金山喜一(日本大学生物資源科学部獣医学科獣医生理学教室)
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