要 約
11歳齢の黒毛和種牛から正常分娩で出生した新生雌牛が,両後肢飛節の関節弯曲,眼球振とうおよび頭部の回旋を示した.剖検では後頭鱗の平坦化および大孔の拡大等の後頭骨形成異常,小脳欠損,大脳後頭葉の尾側への伸張,内水頭症等の中枢神経異常がみられ,仙骨においては潜在性二分脊椎症が認められた.また,病理組織学的に中脳水道および延髄中心管が背側に開口していた.これらの所見よりアーノルド・キアリ奇形(ACM)と診断し,過去に報告のあった牛のACMと比較した結果,牛のACMは器官形成期の上皮―間葉相互関係の破綻に伴い,異常な神経管形成および間葉の細胞移動の異常が二分脊椎症および小脳,頭蓋骨および椎骨の形成異常を引き起こし,小脳形成異常に関連して大脳の形態異常が起こったものと推察された.
―キーワード:アーノルド・キアリ奇形(ACM),小脳欠損,神経管.
------------------------------日獣会誌 61,626〜629(2008) |
† 連絡責任者(現所属):
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平井良夫(長崎県県北家畜保健衛生所)
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