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意見(獣医学系大学生の声)

将   来   の   夢

川西 歩 (麻布大学獣医学部獣医学科4年)

川西 歩
 私が獣医師を目指そうと思ったきっかけは,アメリカの大学に留学していたときに通っていたアニマルシェルターでの体験である.犬や猫が好きで,ボランティアでシェルターに収容されている動物の世話をしたり,触れ合ったりしているうちに一生動物に関わる仕事がしたいと思い,卒業後帰国し,麻布大学に入学した.私が係わったアメリカのアニマルシェルターは,民間ではなく行政のシェルターだったので,収容頭数が多くなれば収容期間が長い動物から順に殺処分が行われており,大変ショックを受けた.収容動物の年齢は犬では1歳未満が多く,しつけをしなかったために手に負えなくなったというケースが主であった.また,飼い犬が出産したために持ち込まれる子犬もかなりいた.一方,猫はほとんどが生まれて間もない子猫ばかりで,親猫の避妊手術さえ行われていれば消えることのない命であった.日本でも殺処分される動物の多くが子犬や子猫であるということを知り,私は獣医師となって不幸な動物を少しでも多く救いたいと思った.また子犬のときは小さくかわいいけれど,大きくなって言うことをきかないから捨てるという無責任な飼い主も多いのが現実である.私は,獣医師として動物の命を救うことにおいて,もちろん病気の予防や治療を行うことはとても重要だが,不妊・去勢手術をもっと普及させることによって子犬や子猫の殺処分数を減らしたり,飼い主と十分にコミュニケーションを取ってしつけの相談に乗ったり,適正飼育について指導できる獣医師になりたいと私は思った.
 実際,獣医学部に入学して,1,2年は基礎的な科目が多く,動物に触れ合う機会も少なく,物足りなく感じていたが,3年生になってから大学病院でいろいろな症例を見る機会を得て,獣医師は命を扱うために実に高度な知識や技術が要求されていることを目の当たりにした.ひとつの症例を診断するためにあらゆる角度から様々な知識を総合する必要があることを知り,今まで別々に勉強していた科目をすべて関連させていくことが診断には必要であることが理解できた.そして日々進歩する獣医学についていくために卒業してからも常に勉強を続けていくことが重要だと思った.また臨床に関する知識や技術だけでなく,獣医師は動物の行動や習性なども知っていて当たり前だと思われていることを感じた.さらに,物が言えない動物を診るためには飼い主からきちんと話を聞きだすためのコミュニケーション能力も重要であることがわかった.
 大学で3年間勉強し,獣医師の仕事には多くの分野があることを理解したが,私は入学前と同様,将来は小動物臨床獣医師になりたいと思っている.



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(担当教官)
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