要 約
1995年8月,採卵鶏の幼すうが13日齢頃より食欲不振,発育不良,沈鬱,脚弱症状,視力障害を呈し約10%のひなが衰弱死した.発症鶏に肉眼病変はなかったが,病理組織学的検査で,視葉,延髄,脊髄,網膜などに空胞形成を認め,脚部の骨格筋にも軽度の筋変性を認めた.視葉および脊髄の電子顕微鏡観察で,髄鞘のミエリン層板の解離による大小不同の空胞形成を認めた.給与していた幼すう用飼料には,配合したサリノマイシン以外に,同時使用が禁止されているラサロシドが含まれていた.この飼料を実験的に採卵鶏の初生ひなに給与したところ,発症鶏と同様の臨床症状と組織学的病変が認められた.以上の成績から,本症例は2種類のイオノフォア(ポリエーテル系抗生物質)の関与した中毒症と診断した.製造工程で何らかの事故により,ブロイラー用のラサロシドが混入したものと考察した.
―キーワード:視力障害,イオノフォア中毒,採卵鶏,脚弱.
------------------------------日獣会誌 61,525〜529(2008) |
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