◎新 刊 |
「すべての犬に里親を!」
阪神・淡路大震災1556頭の物語
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大森伸男(日本獣医師会専務理事) |
本書は,13年前の1月17日突如として襲った直下型大地震,阪神・淡路大震災において自らが被災者となる中で,寝食を忘れ被災動物の救護活動に当たられ,それを我が国初の組織的活動として成し遂げられた中心的活動家としてのお二人.すなわち,当時の神戸市獣医師会会長の旗谷昌彦氏と日本動物福祉協会阪神支部の松田早苗氏の実に臨場感あふれる活動の記録(物語)である.また,同時に救護活動の教訓に富むものでもある.緊急災害時の動物救護活動に主体的役割を果たす獣医師会,動物愛護・福祉関係団体や動物愛護管理事務を担当する行政部局の関係者の方にとっての心構えのテキストとしておすすめしたい.
大震災発生後,実に4日目にして県,市,獣医師会等の関係団体による兵庫県南部地震動物救援本部を立ち上げ,被災動物の保護預かり,健康診断等の救護,里親への譲渡等の一連の救護活動の組織的対応を獣医師会会員,動物愛護団体会員自らが,率先してリーダーシップを発揮され,行政部局や民間団体・企業,全国の獣医師会との連携と多くのボランティアの支援のもとで,成し遂げた.
神戸での実践は,後々の有珠山噴火災害,三宅島噴火災害,新潟中越地震災害,同中越沖地震災害の際の被災動物救護活動に神戸モデルとして遺憾なく受け継がれたといって良い.また,神戸モデルを契機とし,全国からの支援の浄財が緊急災害時の動物救護活動の全国支援組織である緊急災害時動物救護本部立ち上げの基盤となった.さらに特筆すべきは,神戸モデルは行政当局を突き動かし,動物愛護管理行政を「一時保護預かり殺処分」から,「一時保護預かり積極譲渡」に舵きりする契機として,また,飼育者責任原則としての家庭動物の個体識別の推進に弾みをつける役割をも果たした.
その辺の事情は,巻末に旗谷先生自身が,整理され十二分に総括されているが,折りしも,改正動物愛護管理法において動物愛護管理基本計画制度が創設され,本年4月から各都道府県において策定された動物愛護推進計画が動き出す.その中で,動物の災害時対策は,地域防災計画における動物の取り扱いの明確化を通じ動物救護が適切に行える体制を各地域において整備することを求めている.動物救護活動は,共助精神の公益活動である一方血のにじむ思いもあるという.本書を先人からの糧としたい.
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著 者:今西乃子(ノンフィクション作家)
定 価:1,300円+税
発行所:講談社
東京都文京区音羽2-12-22
TEL 03-5395-3625 |
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