公衆衛生タイトル画像

原 著

実験的Helicobacter felis感染猫の病理学的検討

岸川正剛1)†   荻原喜久美1)   古畑勝則1)   福山正文1)   原元 宣2)
山本静雄1)   山田隆紹2)   本田政幸1)   伊藤 武1)

1)麻布大学生命・環境科学部(〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71)
2)麻布大学獣医学部(〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71)

(2006年10月18日受付・2007年9月12日受理)

要   約

 Helicobacter pyloriの感染症に関する基礎的研究の一環として,SPF猫12匹に,Helicobacter felisを投与し感染実験を行った.本菌投与後,胃粘膜に存在する本菌の生菌数測定および免疫組織化学的検索により,12例中9例(75.0%)に菌が確認された.病理組織学的検索では幽門部および十二指腸に,粘膜上皮細胞の腫大,変性および剥離が6例に認められ,同時に固有層内に高度のリンパ球浸潤および中等度のマクロファージと好中球浸潤が認められた.今回の感染実験から,猫の胃粘膜および十二指腸にH. felisが感染し,人のH. pylori感染症と類似の炎症像が認められた.これらの結果から,猫のH. felis感染症は人のH. pyloriの感染モデルとして応用できるものと考えられた.
―キーワード:猫,十二指腸潰瘍,胃潰瘍,Helicobacter felis.

------------------------------日獣会誌 61,471〜476(2008)

 

† 連絡責任者: 岸川正剛(麻布大学生命・環境科学部臨床検査技術学科病理学研究室)
〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71
TEL・FAX 042-769-1932
E-mail : kisikawa@azabu-u.ac.jp