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意見(獣医学系大学生の声)

学 生 の 夢 と 志

西之原将彰(鳥取大学農学部獣医学科4年)

西之原将彰 私は,先日ある動物病院を見学に行った.その動物病院はプレハブだった.しかも,内装は全て手作り.受付も,診察室の壁も,扉も,駐車場も.この動物病院で,私は人生で2度目のすごい人に出会った.
 初日の見学にもかかわらず,その日の診療が終わってからマンツーマンで1時間半は話した.仕事で疲れているはずなのに,見学に来た学生にそこまで付き合ってくれる先生は,滅多にいないと思った.先生の話を聞くだけで「エネルギー」が体の中に入ってくる.自分の中に眠っていた入学当初の獣医学に対する熱い思いが,改めてこみ上げてくるのを感じ思った.
 見学を通じて,獣医学に関する知識・技術的なことはほとんど教わっていない.ただ,エネルギーの塊のような先生からは,胸に響く言葉(エネルギー)を沢山もらった.このようなエピソードがあり,人にエネルギーを与えることができる先生は私の十年先の目標となった.
 さて私の志は,というとこのプレハブ先生のように他人にエネルギーを与えられる人になりたいということである.まず人が何かの目標を達成していくためには,重要な要素が4つ必要であると思う.「時間」と「お金」と「個人の能力」と「やる気」だ.
 「やる気」=モチベーションが核となる重要な要素だ.「やる気」を引き出せるきっかけを与える人がいれば,与えられた人は目標をいずれ達成できるはずであると思う.例えば,獣医師として,手術がうまくなりたい,新薬を開発したい,動物のQOLを向上させたいというやる気エネルギーを与えられたアクティブな人を見て,また別の誰かがエネルギーを得ることができる.エネルギーの連鎖が次々に起こることで,獣医学全体のレベルが上がっていくはずだ.
 いま進路は決まっていない.ただし国の研究者でも,大学の教員でも,小動物や大動物の臨床医でも,とにかく自分が他人にエネルギーを与えられる人間になりたい.これは学生であるという現時点でも取り組めると考え,これまで2つのことを実践してきた.1つ目は,水族館,NOSAI,動物病院などの実習に行き,そこで何を学び,どう感じたかを,学科のサークルで発表し,この発表を聞いて「よし私も実習に行ってみよう!」と思ってくれる人が出てくるように働きかけたことである.2つ目は,大学の図書館に図書の購入希望を出していることだ.教科書以外の獣医学書や最新の専門雑誌を購入してもらい,自分とこれから入学してくる学生が,より良い環境で獣医学が学べるように蔵書を充実させ,モチベーションの維持もしくは向上に努めてきたことだ.
 このように自分がこれまでしてきたことは小さなことだが,同じ獣医学科の学生に何か良い刺激を与えられるように心掛けながら学生生活を送っている.今後は自分がどの分野で活躍していきたいかを絞りつつ,これまで以上にエネルギーを与えられる人物になりたいと考えている.
 体がいくつもあったら具体的には以下のことをしたい.

  • 国会議員になり獣医学教育制度を変えたい.
      入学はやさしく卒業は難しい大学にしたい. チャンスは多くに与えられ,能力を確実に身につけていった者のみが最終的に学位を取得できる.学生は学位を取得するという目的をもって努力するため高いモチベーションを維持できる.
  • 小動物もしくは大動物臨床獣医師になり新卒獣医師への教育を充実させたい.
      症例のディスカッションや勉強会への参加,手術の解説と指導,飼い主さんとのコミュニケーションスキルの向上を目指し,信頼関係を築く.
  • 大学の教員になり学生が評価する教育体制を普及させたい.
    ア 学生に対して授業のわかりやすさ,提出物の採点,返却についてアンケートをとり,教える側もそれらの項目に留意しながら授業を進める.授業評価の低いクラスは閉鎖する.
    イ 思考を凝らしたVisual Aid(パワーポイント,動画,実際に道具を持ち込む等)で学生の好奇心を誘発する.
    ウ PBL(問題解決型学習法)の導入と普及
  • 野生動物の獣医師になり,生態系を維持したい.
      森林伐採,水質汚染によって野生動物が絶滅している.次世代の人が野生動物を写真や映像でしか見れない世界になるのを防ぎたい.



† 連絡責任者(担当教官): 太田康彦(鳥取大学農学部獣医学科実験動物学教室)
〒680-8553 鳥取市湖山町南4-101
TEL・FAX 0857-31-5637
E-mail : ohta@muses.tottori-u.ac.jp